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告白
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「あの、間宮くん少し時間いいかな?」
見れば大人しそうな小柄な女だった。小動物を連想させるその顔は田中が好きそうだった。
これならほっとけば田中がなんとか言って追い払うはずだ。
中断していた昼飯を食うことにした。満腹感を得るためにゆっくりと咀嚼する。
「ほら、間宮返事くらいしなさいよ」
そう言った田中の顔は口調と同じくらい素っ気ない。
今日は自分でなんとかしろということなのだろう。
こいつ根に持ってやがる。
二日前にも目の前の女と同じように、俺に時間をくれないかと言ってきたブス女がいた。
そのブスは田中がやんわりと俺に恋愛の興味がないと言って断ると、何故か田中にキレはじめた。
曰く、田中は俺の事が好きでしょうがない気持ち悪いホモ野郎でみんながそう思っている、一見イケメンを髪形でそれらしく見せているが平凡顔が隠せてないし田中は俺とは釣り合わない、俺が黙っているのをいい事に調子に乗って恋人面するな、だと。
落ち込んでいるんだろう、口数が減った田中はその後初めて俺の前でヘラヘラしなかった。
こんなに可笑しいことは滅多になかった。
ボクシング部は今や転機を迎えていた。
放課後部室に行けば、窓の外にはパンダを見に来た見物客のようなのが沢山いる。今までボクシング部があるのさえ忘れていたんじゃないかと思う校長も時々やってきては激励して行く。
入部希望者も増えた。
それを受けて顧問は顔が緩みっぱなしだし、部員は見物の女に鼻の下伸ばしっぱなしだ。
みんな浮き足立っている。
それも全て団体戦準優勝、個人戦優勝という成績を叩き出したからだった。
心底迷惑だ。
部室は煩くてトレーニングどころではなかったし、教師は生温い目で見てくるし、男子生徒は嫉妬の目だ。
そして何よりも女の恋慕の目が迷惑だった。
今まで告白なんてもんに縁はなかった。それもこれもーーー。
「あの、間宮くん?」
思わず舌打ちした。女はびくっと反応するが、目の前の田中は動じない。そのことにも腹が立ってもう一度舌打ちしたい気持ちを溜息を吐くことで抑えた。
「俺忙しいから」
俺の言葉に女は逡巡する。が、また弁当を食べ始めた俺に覚悟を決めたようだった。
女は拳を握って顔を真っ赤に変化させる。一度すうっと息を吸うと言葉とともに息を吐き出そうとした。
「本庄くんの事どう思っーーんガっ!」
「待て」
俺は女の口を素早く手で封じた。
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