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鈍感
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勢いが過ぎて女が後ろに倒れそうになるのを右腕で支えてやる。
突然席を立った俺に視線が集まるのが分かった。
抱き込む形になってはいるが手が顔を塞いでるだけだ。俺はその他の部分の女の体には触ってはいない。
セクハラしてるわけじゃねぇぞ。
そんな意味を込めて周りを見ると視線が散った。それを確認してから先の女の言葉を反復する。
今、この女間違いなく「本庄」と言った。
田中に確認を取るように目を向けると頷いた。
「茅野さんは本庄くんの話しにきたの? もしかして間宮か本庄くんの追っかけかなにかしてんの? 間宮とは初対面だよね? 初対面の間宮に本庄くんの話題振ったのはどうして?」
田中は現金な奴だ。女が俺に好意を抱いていないとわかると急に口達者になる。
加えて本庄のネタだ。喋らないでいられないのだろう。
矢継ぎ早な質問に茅野というらしい女は頷きを返していたが、やがて顔を真っ赤にして俺の腕を叩いた。
なんだこの女タコか?
呆れたようなため息が聞こえる。
「あー先ず顔から手を離そうか、間宮」
田中に言われて気付いたが、鼻と口は掌の中にあり、辛うじて目が塞がっていないだけだった。なるほどこれではタコになるのも当然というものだ。
「 ーーーっふはっ! 自分の手がおっきいのに気付きなさいよっ! こんの鈍感男っ!」
手を放すなり喚き立てたその声は教室に響き渡ったのではないだろうか、という程良く通る高い声だった。
うるせぇな、この女。
否、響き渡ったのだ。
教室の其処彼処に「間宮」と「鈍感」という単語が行き来している。
「ぶはぁっ………ぐぶふふ」
やはり最初に反応するのは田中だった。
一所懸命に笑いを堪えているのだろうが、堪えきれずにいるために喉の奥でくぐもった不快な音になっている。
田中の笑い上戸はいつものことでシカトする。
「そりゃ、おまえの顔が小せえだけだろ」
あ、タコだ。
女の顔がまた真っ赤に染まった。
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