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捕食される
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乱れていたセーラー服の男から必死で逃げようとした本庄。楽屋の開いたドアの隙間から覗く先は荒れている。本庄は未だ腰にしがみついたままだ。
なんだろうか、この状況は。
溜めた息を吐き出すと、本庄がピクリと揺れる。
「大丈夫か?」
とりあえず離れろという意味を込めて頭を撫でてやる。すると、意図を汲んだのか本庄は勢い良く立ち上がると、頭を撫でた手を掴んだ。
「本庄……?」
ぐいぐいと俺を引っ張り、楽屋に入ろうとする。楽屋で待っていろと言われていた俺は抵抗する気はなく、おとなしく従う。身体が楽屋に完全に入りきると本庄は直ぐに鍵をかけた。
金髪が入ってこねぇようにしたのか?それにしても二人きりかよ。
なんだか急に居心地が悪くなった。ライブハウス、しかも関係ないのに関係者のみが入れるバックステージで、その中でも出演者のみが入れる楽屋だ。居心地なら最初から悪かった。そしてそれを意識してから、今すぐにでも足が出口に向かいそうになる。
要するに、気不味い。
普段なら気不味い思いをさせるのはいつも口数の少ない自分だったし、その空気を気にも留めなかった。その俺が気不味いと思ってしまうのは単に本庄のせいだ。
鍵をかけた後こちらを振り返り、そのまま動かない。無表情とも言える中で、ただ、瞳だけがギラギラとしている。俺を見つめたまま、一向に動こうとしない。
「……本庄……っ!」
沈黙に負けて名前を呼ぶと、それを狙っていたかのように一気に間合いを詰められる。予測出来ない本庄の行動に慄くと腕を掴まれた。反射的に振り払い、逃げるように後ろに下がる。
本庄が近づく。俺は離れる。無意識だった。
自分の無意識の行動に気付いた時には既に壁に背中があたっていた。
逃げないと。逃げないと。
ただそればかりが頭をよぎる。
捕食されそうな、恐怖が目の前に迫っていた。
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