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喰われた
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追い詰められた俺は本庄に問う。どういうつもりか、と。応えはなかった。その代わりに乱暴に左手首を掴まれて手前に引っ張られる。崩れた体勢を直そうと自然に出た右手も取られ、本庄に倒れ込んだ。
「ッおい!」
「逃がさないから」
体が本庄にぶつかる前に無理矢理壁に戻された。両手首を壁に縫いつけられる。
焦って名前を呼べば、それは声にならずに消えた。
後頭部が打ち付けられた衝撃よりも驚愕が勝った。口元に乾いた感触を感じて驚きに目を見開けば、獰猛な獣のような目とぶつかる。
「あっ、っく」
押し返そうにも体重をかけられた手首を壊しそうで、大した抵抗も出来なかった。そうこうしている間に舌が侵入を果たそうと、閉じた歯をこじ開けようとしてくる。
ヌルついた熱い感触に上歯茎を撫でられ、肌が粟立つ。
その間も本庄は視線を逸らさない。
学校で何度も感じた視線と同じだった。
「ん……!」
「……っ??」
歯列に隙間をワザと作り、誘い出した舌に噛みついてみた。僅かに広がった血の味に嫌悪する。それは紛れもなく他人の味で。
唇が離れたのは良いが、それだけで組み敷かれそうな状況はなんら変わっていない。
「なんでこんなこと…?」
「……。」
問いかけた声が普段とはあまりにもかけ離れていて、いつもだったら舌打ちしていただろう。それくらい弱々しい声だった。
そんな俺を黙って見つめ返す本庄の威圧感に耐えられず、顔を背けた。これ以上、本庄の顔を見ていたくなかった。
得体の知れない恐怖心に俺は負けた。怖いものなどないと思っていた俺を芯から覆される。初めて気持ちで負ける感覚を味わわされた。
それは屈辱だった。
不意に顔を背けたのを咎めるように、耳の直ぐ下の首に噛みつかれた。
俺は歯を食いしばった。そうしないといけなかった。悲鳴を上げそうになったからだ。
くそ、最悪だ。
なんとか打開しようと試みるが、蹴り上げた脚も軽くいなされ、膝の間に入られる。
逃げれば追われ、顔を背ければ噛みつかれ、蹴り上げれば足を塞がれて。
全てが後手後手に回ってしまう。
噛みつかれた場所から徐々に顎のラインを辿って、舌が唇を目指して這う。とうとう目的に辿り着く、というときに本庄が動きを止めた。
「…みや……ら。間宮。お願いだから、俺を拒まないでよ」
吐息のような小さな声だった。祈るように俺の肩に額を擦り付けてくる。その間も俺の手を縫い止める力は緩まずに、だけど冷たい手が微かに震えているのがわかった。
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