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どっちが
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その言葉が衝撃的だと感じてしまったのだから、俺も相当頭が湧いている。そもそも、本庄が俺を好きだと納得した時点で、そんな言葉を出してはいけなかった。もともと茅野と、女と付き合っていたんだ。それが男を好きになって悩まないはずがない。
キスされた時の手の震えと冷たさを思い出した。……拒絶される怖さにあんなに怯えていたのに。
「あー、すまねぇな。……ちと茶もらえるか?」
「あ……。」
気の利かない自分を恥じるように目を伏せて、本庄は小さい声で詫びた。長いまつげがふるふると震えた。そういう仕草をすると整っているだけに、何処と無く少女めいて見える。もてなしがないのを責めたわけでもないのに、なんだか虐げているような気分になる。
インターバルが欲しいだけなんだがな。
混乱しきった頭を正常に戻すためにも時間が必要だった。ペットボトルのお茶と氷を入れたグラスを持って来て、注ぐ様子に何処か違和感を覚える。手が震えていた。2リットルのペットボトルを手を震わせながら注ぐのが女みたいだったからだ。そんなに緊張しているのか疑問に思うが、零す前に手を貸してやる。
「あ、ありがとう」
「べつにいい……緊張してるのか」
「え、ちがっ!…くないけど、でも……ライブの後はいつもこうなんだ。力出し切っちゃうみたいで」
「……。」
試合後はしばらく立っているのが難しい時があるものだ。それと似たようなものだろうか。いや、まて。俺を押さえつけていた力は相当なものだったはず。それを口にしてやろうかと思ったが、考え直す。それよりも緊張しているのか、と聞いた自分の気の利かなさに苦い笑みが浮き出そうになる。
注ぎ終わったペットボトルの蓋を締めると、目の前にグラスが差し出される。受け取ろうと手を出すと指先が触れあった。あ、と思う前に本庄の顔がみるみる朱に染まっていった。思わず受け取りかけていた手を離してしまった。幸いラグなど敷かれていなかったからフローリングを濡らしただけだった。
「あ、悪りぃ」
「いいよ。拭くもの持ってくる」
反射的に謝りはしたが、俺は激しく動揺していた。
なんなんだよ。ーーあれは、あんな…。
強引にキスしたり、セックスしようと迫ったりしたような男がする反応ではなかったと思う。手が触れただけで赤くなるような、まるで初々しい反応に調子が狂う。何か叫びたくなるような衝動を、掌で口を覆うことで押し込める。
手が触れて赤くなる本庄も本庄だが、触れたと意識した俺も俺だ。挙句に動揺してお茶をぶちまけた。
自身に悪態をつきたくなる。これじゃどっちが初心かわからない。
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