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大怪我の理由
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周りの野次馬達に散々囲まれて更にへとへとになった五條がよいしょ、という掛け声と共に俺の席の隣に座った。
よく見れば唇の右端や左目の下に大きな紫色の痣、額には包帯を巻いていて所々切り傷や擦り傷が目立っている。それにシャツの袖やスラックスの裾から覗く絆創膏。
彼からはつん、と湿布の匂いがした。
「怪我、酷いな」
声をかけてみれば、うんうんと気怠げな返事をしながら腕を上げ伸びをする五條。そして真面目な顔をしたかと思うと座っていた椅子を引っ張って俺に近づいた。
「ちょっとヘマやっちゃってさ」
へらりといつもの笑いを見せようとしたらしいが、笑うと口端が痛むらしく、引きつった笑顔で眉をしかめた変な表情になっている。黙っている俺を確認して、今度は小声で囁いた。
「まだ誰にも言ってねぇからここだけの話、生まれて初めて負けた」
「……」
珍しいこともあるもんだ。無敵な五條が初めて喧嘩で負けたらしい。体力測定で握力は軽く100キロを超え、反復横飛びでは驚異の回数を叩き出したこいつが負けるとは。
相手がよっぽど強かったのだろうか…めったにない大怪我の理由も合点がいく。
まだ黙っている俺に痺れを切らしたのか、五條は「お前反応うっすいんだよ!」「でもそこがいいんだけどな」と痛むだろう口角を上げてゲラゲラと笑い飛ばし、肩をばんばんと叩くなりここから去っていった。
ただ「体を大事にしろよ」と声を投げかける事しかできなかったが、彼は片手を上げてまたにやりと笑ってくれた。
本当に大丈夫なのだろうか。
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