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違和感
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次の日の事。五條の体にある包帯や絆創膏の数は減ったが、本調子ではないようだった。
休み時間、五條が担任に教材を運んでくるよう頼まれていた。担任が若い女性であるため、重い教材の入ったダンボールを運ぶ時は体力に自信がある彼が呼ばれている。
今日もいつもと同じ様に気前よく取りに行った。のはいいのだが…。
二箱積んだダンボールを持ちながら彼は真っ青な顔でぶるぶると体を小刻みに揺らし慎重に非常にゆっくりと廊下を歩いていた。
すれ違う生徒達は半笑いで珍しい彼の挙動を見ている。そう、可笑しいのだ。いつもなら、怪我をしててもこれくらいのダンボールなんて両脇に抱え笑顔で疾走して届けてくるのに、らしくない。
教室にいた数人の男子が「お前無理すんなって!」とか「俺が手伝ってやろうか」と五條をからかうが、本人は「うるせぇ!」と声を出すだけで精一杯のようだ。ようやくドアにたどり着いた五條を見かねた担任、小林は駆け寄ってダンボールを一つ取り上げた。
「ありがとう、ごめんごめん。まだ本調子じゃなかったか、大丈夫?」
「あ、いえ、大丈夫っす」
とは言っているものの、腕を揉んで解したり肩を回したりしている。辛そうだ。
何故か彼から違和感を覚えた。よほどの大怪我ではないから其れはそのうち消えるだろうと踏んでいたのだが、今日1日ずっと五條はこの調子だった。
昼休みには教室にいる男子全員に腕相撲の勝負を挑み全敗していた。俺と勝負したときも以前とは比べものにならないくらい弱くなっていたのを感じた。普段なら彼の圧勝だが今回は違う。
遠慮なく薙ぎ倒すと、負け続けのショックに暫く突っ伏していた五條は顔を上げれば思い詰めた表情をしていて、大丈夫かという問い掛けには答えてはくれなかった。
日が経つにつれ五條の怪我は完治していくものの、不調は一向に良くなる気配はなかった。走れば誰よりも遅くなったし、頼まれた力仕事もこなせないようだ。
彼自身は自分の手を見て溜め息をつく事が多くなり、フォローの言葉をかけてみるが良くなる気配はない。
ふと、今まで気にしてもいなかった事が頭の中を横切った。
もしかしたら初めて喧嘩に負けた日、なにかあったのかもしれない。そう思い立って五條に話しかけようとしたら偶然にも向こうからやってきて声をかけてくれた。
「一緒に帰ろうぜ」
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