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後片付け
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side五條
兵藤が帰った後の夕食は、姉と妹のせいで兵藤についての話題で持ちきりだった。俺はと言えば2人のせいであいつとまともな話すらできないまま帰らせてしまったことにふてくされていた。
普段は俺のダチについて何の興味も示さないくせに、よりによってなんで兵藤なんだよ。
確かにあいつは男の俺からしてもカッコイイと思う。鼻筋は通って彫りは深めだし、切れ長の黒い大きめの瞳はたまに憂いを帯びてどこか哀愁を誘う。なによりも真面目で優しい。そういう部分に女は弱いのだろうと、分からなくもねえが。
「本当にカッコよかったよねー体おっきいし、優しいし」
「敦くんもカッコイイと思うけど、アタシは直人くんの方がタイプだわぁー」
「敦くんと直人くんはカッコイイの種類が違うよー。敦くんってV系って感じじゃない?」
「そうねェ、どちらかと言うと直人くんは和装って感じよねェ。さっき腕触らせてもらったんだけどさァ、しっかりして頑丈だったわよぉ…もーあれに抱き締められたらたまんないわぁ」
「キャーッ」
なんて評価は上々で、盛り上がる2人を見ていたら胃が痛い。しかもその話を聞いて母親までもが「そんなにカッコイイ子なの?」と興味を持ってしまう始末。
そして確信したのが、兵藤はモテないはずがない。本人は否定してたけど、やっぱそれは「話さないから」という事が一番の壁であり、それを越えてしまえばあいつの持つ魅力に気づく。
兵藤が眼中に無いだけで、その気になれば簡単に彼女ができてしまうという事だ。…できるならそれだけは避けたい。なぜ避けたいのか、そこまで考えて俺は自室のベッドの上で寝返りをうった。
だって彼女ができてしまったら最優先事項が変わるわけだから勿論、今まで以上に兵藤と仲良くなることはできない。
彼女を作る作らないは本人の自由だけど、それでもまだ知らぬ女の側にあいつがいる事を想像したらチクリと胸が痛んだ。
僻みじゃない、俺は彼女を作らないと前々から決めていたし何より弱くなってしまった今はそれどころじゃない。
段々と思考が絡まってきて振り払おうとまた寝返ったら、昼間作った脚の痣に響いて暫く悶絶しそうになった。
「あー…もう、何だってんだ」
ようやく落ち着いて仰向けになると見慣れた天井が目に入る。すると頭の中で声が反響した。それは体育の時間に聞いたあいつの声でその時は単純に聞こえたはずのあの質問が、今は他の意味を含んでいるようで。
(お前はどう思う…)
「わかんねえよ…」
何で弱くなったのかも、何で一人の人間との距離に対してこんなに悩まなくちゃいけないのかも。はたして兵藤が強くなったのは俺を守ってくれるためなんだろうか。他意は無いのだろうか。だとしたら、あいつは俺のボディーガードマンか?
勿論、そんな関係にはなりたくない。ただピンチになったら守ってもらうだけの関係。
その時部屋の遠くからバタバタと足音がこちらに向かっているのが響いてきて、ノックと共に勢いよく扉が開いた。
「お兄ちゃんっ」
「ああ?」
暗い思考の迷路にさまよっていた中、いきなり駆け込んで来たのは風呂上がりらしく首にタオルをかけた妹だった。起き上がるのも面倒なので寝転がったまま視線だけを実桜に向ける。
「何だよ、」
「実桜のサプリ飲んだ?」
「サプリィ?どんな?」
身に覚えがねえ。妹がサプリメントを飲んでいた事は知ってたが、どんなものを飲んでいるか興味無いし間違えて飲むはずない。聞き返せば実桜は一瞬戸惑って恥ずかしそうにその場で数回足踏みをするが思い切ったように言った。
「んん、おっぱい大きくなるやつ!」
「ブバッ」
「前に買ったばかりで一回しかあけてなかったのに量減ってたの!」
妹の口から出た単語に思わず噎せて、そんなもの飲んでたのかよと頭が痛くなる。確かに女の悩みは男には分からない事が多いがそこまでするもんなのか…。
まだ育ち盛りなんだから望みが無いわけねーじゃん。きっと姉の豊富な乳が羨ましいとかそんな理由だろうが…。
「俺が飲むわけねーだろうがっ」
「だよねェ…やっぱりお姉ちゃんかなぁ」
「いや…あいつに限ってそれは…」
「……じゃあお母さんかな?…お父さんだったらどうしよう…」
「ブバッ」
「何よ!お兄ちゃんだってサプリ飲んでるくせに」
「あれはカルシウム剤だっつーの!」
些か不満そうな表情のまま実桜は「次、風呂入ってよねー」と言い残すと扉を閉めて自分の部屋へと戻っていった。
騒がしい嵐が去ってやれやれと体を起こす。風呂でも入ってサッパリしようとベッドを降りた。
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