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校内の人気者
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五條は大事をとって3日間学校を休んだ。腕を動かすわけには行かないので、絶対安静。あれから本当に彼の力が戻ったのかは分からないが叔父さん曰わく、結果はリハビリが済んだ後で分かるそうだ。
五條も俺もそれに納得して、彼は治癒に専念すべく普段よりも大人しく無理をしないで休んでいる。
世間には…、もとい不良達の間で五條復活説が流れ始めていて比較的不良集団の動きが大人しくなったと思う。俺もあれから彼等に随分と睨まれはするが警戒してか、襲撃に合っていない。
終礼後、誰も座っていない前の席を見ながら教科書を揃えて鞄の中に入れた。やっぱり五條が居ないと周りもクラスも静かでちょっと寂しい。授業をしにくる教師達は決まって休んでいる五條を心配していたし、クラスの女の子達も残念がっていた。
やっぱり彼は人気者なんだなぁ、と涼子さんに話してみたら、今朝彼女に「お見舞いにいってきなさいよ!」と手作りのクッキーを渡されてしまった。丁度様子を見に行こうと思ってたし、いい口実になる。椅子から立ち上がったら目の前にニヤニヤと笑みを浮かべた枷村が現れた。
「これから五條ん家行くんだろー?」
「…ああ」
彼に話した覚えは無いんだが…と首を捻っていたら机の上にトン、とポッキーの箱を置かれた。
「俺からのお見舞いって言っといてー」
「あ、じゃあ俺も」
と、枷村の隣に湧いて出てきた谷川がマシュマロの袋を手渡してくる。2つのお菓子を鞄に入れたら今度は頭上から声が振ってきて、見上げれば氷室が爽やかな笑顔で歌舞伎揚げの袋を差し出した。
「これも渡してやってくれ!」
せんべいのチョイスは渋いな…とそれを鞄に入れた直後、また後ろから声がかかる。
「兵藤くん、あの、これも渡して貰っていいかな?」
「おねがーい」
「アタシも~」
男性陣と違い綺麗にラッピングされた手作りであろう菓子類を次々に渡される。それをきっかけに俺も私も、と五條へのプレゼントが俺の元へ一度に殺到する。とうとう鞄の中へ入りきらなくなった菓子は水口さんがくれた紙袋の中へ収める事になった。
もうここまできたら人気者という域を越えてただのネタなんじゃないか?
よろしくなーと枷村達に見送られて教室を出たら、数人の女の子達が待ち伏せしていて眼前に菓子を突きつけられる。
「あの、五條くんに…」
皆まで言うな、と俺は無言で紙袋を差し出して入れやすいように口を広げる。彼女達はその中へ菓子を入れると満足そうに礼を言って去っていった。芸能人のマネージャーでもやってる気分だと思いながら階段に向かおうとするが、少し進む事に足留めを食らう。
彼女達は打ち合わせか何かしたのだろうか…よりによって何故今日なんだ?何故俺なんだ?しかも何故今日見舞いに行く事がバレているんだ?
分けが分からないまま、気づけば紙袋までが満杯になっていた。
ようやく階段への道が捌けた所で前方に見覚えのある男子生徒が壁際に凭れて腕を組んで此方を見ていた。目が合ってしまい、思わず立ち止まる。
あれは間違いなく大野弟、大野山彦だ。区別がついた自分を誉めるが別の考えが俺を冷静にさせた。
このままあそこへ向かえば絶対に約束を破ってしまった事を怒られる。二度と喧嘩をしないという誓いをその日のうちに台無しにしたのだから。よし、と気を引き締めて彼に背を向け早足で元来た道を引き返した。遠回りになるが、反対側の階段から降りよう。
「ちょっとちょっと!!!!」
後ろから大野弟が追いかけて呼び止めようとするが聞こえない。俺には何も聞こえない…聞こえない…。
だがしかし突然何処からか出て来た大野兄によって妨害される。
「逃がすかっ!!」
「っ」
右から左からと攻めてみるが、ディフェンスは固い。暫く攻防してみたが「はい残念ー」と格闘技の達人に身体を抱き締められて二組の教室の中へ放り込まれてしまった。ボディタッチは反則じゃないのか。
逃げようと扉に向かうと、大野兄弟が仁王立ちして遮りながら俺を睨む。
「往生際が悪い!」
大野兄はムッと顔をしかめるが口元は笑ってる。
「よーくも、その日のうちに破ってくれたじゃないの」
大野弟は溜め息混じりに言うとやれやれと肩を竦めた。
そして少し声を落とすと困ったような顔がニヤリと悪戯な笑みに変わる。
「でもねぇ、今回は『五條くんと一緒にいた』って報告を受けたんだよね」
「ああ、今回は、ねー」
「よって、今回は、君は巻き込まれた側の被害者になった」
一体どういう事だと驚いた反面、一つの仮説が頭に思い浮かんだ。五條の存在を隠蔽しようとした人物は「五條が弱くなった」という事実を公から隠したかったのだ。だから五條が不利だった喧嘩を揉み消した。しかし先日は彼が1人で不良達を倒したという復活説が出来たため、隠す必要は無いと判断したのだろう。
五條の事を良く知り、尚且つ不良達の口を止めれる人物。その条件に当てはまる人物は、俺が思い付く中で1人しか知らない。見事な金髪をした男が目の端にちらついた気がした。
「ま、用件はそれだけなんだけど」
「だからって、次は巻き込まれないようにしなさいよー。喧嘩、駄目、絶対」
「分かった?」
頷けば2人は納得したのか両サイドに避けて道を開けてくれた。廊下に出ようとした時、大野兄に「ちょいと」と呼び止められ振り返ったら胸ポケットから棒付きのキャンディーを取り出して渡してきた。
「五條くんにヨロシクー」
「俺も、宜しく言っといて」
大野弟も同じように胸ポケットからビスコを取り出して俺に押しつける。袋には勿論「おいしくてつよくなる」と書いてあるのだが…これに至っては笑えない。
みんなは一体五條を何だと思ってるんだ…。
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