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嵐の予兆
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side?
「気に食わねえ」
男は吐き捨てるように呟くと凭れていたトタン板を踵で蹴る。既に雨風に晒され、錆びていたそれはバアンと盛大な音を立てて割れると地面へと崩れ落ちた。目の前でその様子を見ていた金髪の男は「おお、怖い」と口にするが、怯えた様子も無くただ肩を竦める。
「誰なんだよアイツはッ」
トタン板を割った男はまだ気が収まらないのか足元に落ちたそれをバリバリと踏みつけた。粉々になっていくトタン板を見ながらその問いに金髪の男、中島はさも面白そうに笑って答える。日が暮れて全く人気のなくなった裏路地に彼等二人分の声は辺りによく響いた。
「だから、五條くんのお友達って言ってるじゃん?」
「だからッ…アイツは、龍牙は喧嘩にダチを連れ込まねえんじゃなかったのか!」
男は中島の返事が気に入らないのか更に苛立って声を荒げる。彼は「そうだよなァ」と男の言葉を肯定するが、大して気にも止めていない。
「変わったんだろ?アイツもさァ。あの子に感化されちゃったんだろーなァ」
「はァ!?」
意味が分からない、という様子で男は中島の方へ一歩踏み込むと距離を詰めた。中島は、ポケットに手を突っ込んだまま憤る男を一瞥するが、すぐに視線をまた地面へと戻した。
「いい子だぜ?超面白いし」
「それが気に食わねえつってんだ!!第一、弱ぇじゃねぇかッ」
「五條にとったら、強さが一番ってわけじゃねえみたいだなァ」
「ッ」
言葉に詰まった男は、もどかしさに唇を噛み締めた。一体この男も五條も何を考えているのか分からないと。かつて同志だった者達がこうも変わるものなのかと。2人を変えた男が憎くて仕方がなかった。
「まーお前もさァ、一回話してみりゃ分かるって。…あ、でもお前とは相性悪そうだなァ…。つーか、俺個人としてはお前みたいな喧嘩っ早い奴と絡んでるとこ見たくないって気持ちもあるんだケド」
ゲラゲラと笑い飛ばした中島は、もうこれ以上話す気は無いと男に背を向けて元来た道を引き返す。男は引き留めるが、金髪を靡かせた男は二度と振り返らなかった。
消えていく中島の背中を恨めしそうに見送りながら男は腹いせに側にあった壁をこれでもかと殴る。
「…兵藤…直人……」
どんな気か知らねぇが…てめえがアイツの隣にいることがどれだけ間違ってるのか、分からせてやる。
そう決心した男は暗闇の中の道を中島とは反対方向へ引き返した。
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