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ケーキバイキング
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約束の日曜日。午前10時。
俺は待ち合わせ場所の駅前広場で一人、街灯に凭れかかって3人が来るのを待った。
当然、今日の事は五條には話していない。メンバーの中に中島がいる事が知れたら、五條に全力で止められてここに来ることが出来なかった可能性がある。それほど二人は磁石のS極とS極のように頑張ってもくっつかない…犬猿の仲なのだ。
俺が話していなくても、茴香さんか実桜ちゃんのどちらかが言ってくれているか、もしくは五條も来るかもしれない。
「直人くーん」
声がした方向を見れば、三人が一緒にこちらへ向かってきていた。その中には五條は居ない。これはやはり、荒れる事を知って誰も彼に対して何も言ってない可能性が大きい。だとしたらバレたあかつきには相当怒られるんだろうな…これは覚悟しておかなくては。
いち早く近付いてきた実桜ちゃんがタッタッとヒールを鳴らして俺の前で立ち止まった。
「ごめんね、待った?」
「いや…足はもういいの?」
「うん、もう全然平気!」
「よかった」
「はろーん、私服の直人くんもカッコいいねェー」
「あら、大人っぽい服着てくるのねぇ、更に可愛くなったじゃなぁい」
中島が俺の首へするりと腕をまわして背後から顔を覗きこんでくる。そしてもう一本の手が腰へ回ってウエストをいやらしく撫でてきた。よく見れば腰を撫でるのは茴香さんの手じゃないか。
「セクハラですよ…」
「いいじゃなあい、少しくらい触っても減るものじゃないでしょぉ?」
ブルーのストライプ地のノースリーブシャツに白い七分丈スキニ―パンツを履いてサングラスを掛けた茴香さんは本当に見た目は綺麗だが、やることが少し変態臭い…。内心ドキマキしていたら今度は中島に耳元にふっと吐息をかけられた。ぞわっとした感覚に首を振って中島から距離を取る。
「中島っ」
「ヒヒヒ」
黒のポロシャツにワイン色のカーゴパンツを履いた彼は想像してたよりも派手な格好をしていない。いつもつけている腕輪は無くて、首元に光るシルバープレートのネックレスが唯一目立つ装飾品だろうか。中島を怒ったら今度は茴香さんが手を出してきてきりがない。見かねた実桜ちゃんが仲裁に入ってくれた。
「もーやめなよー直人くん嫌がってんじゃん」
「なによう、ただの挨拶じゃなぁい」
「そうそういつものスキンシップ」
まったく意気投合する彼らに頭が痛くなった。そんなに人をからかう事が面白いのか…。もう、とため息をついた実桜ちゃんは鞄を持ち直すと薄いピンクのワンピースを翻して先へ歩いて行ってしまう。
「せっかく早く出てきたのに意味ないじゃん~席なくなっちゃうよ。早く行こう」
彼女の言葉に大きく頷いて2人を押しやってから実桜ちゃんの後へ続く。中島と茴香さんは「はいはい~」と気だるげな返事をして俺達の後を追いかけてきた。
「カップル割り…?」
ホテルの中へ入り、バイキングコーナーの店の看板を見た時だった。看板の横には「期間限定カップル割り」という一文が書かれていてあり、疑問が口に出てしまう。すると前にいた茴香さんが答えてくれた。
「そぉよ~カップルで来たら一人の料金が半額になるのよぉ、つまり二人で一人の料金になるってこと」
「だから4人で2人分のお値段ねっ。お得!」
キャッキャとはしゃぐ五條姉妹を見て、俺は全てを理解した。ああ…つまりはダシにされたんだな。
微妙な表情をしていたら隣でふふふと中島が笑う。
「女の子のこういうしっかりした所って可愛いよなァ…」
「…確かに」
くるりとこちらを振り返った茴香さんは俺の腕を引くと、そのまましがみついて横に並んだ。そしてニマニマと笑ってこちらを意味ありげに見上げてくる。
「今からアタシ達は恋人よぉ?よろしくねぇ、直人くぅん」
「じゃあ実桜は敦くんとカップルになる~」
「よろしくねー実桜ちゃん」
はぁ、と今日一番の深いため息が口から零れてしまった。
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