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傷つけることしか
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「君を傷つけている俺はどうしたらいいんだろう?」
「どうにもできないよ」
僕は顔を歪めた。
「あなたが自暴自棄をやめない限りは」
「自暴自棄だって?」
弓弦さんは思いがけなくも狼狽した。僕もどこからそんな言葉が出たかわからなかった。
「何を根拠にそんな忠告をするんだ」
彼は、僕を非難するように言った。
「あなたの顔を見ればわかる。あなたの絶望的な顔、疲れた」
dolore
自分で何を言っているのかわからなかった、が、弓弦さんは驚いていた。
「どうしたら、君を傷つけずに、俺は君に近付けるのか」
彼は、朦朧とした様子で言った。
「だめ、近付かないで!」
僕は、弓弦さんが手を伸ばしたとき、とっさに制した。
「近付かないで、それ以上近付いたら、あなたはまた僕を傷つけるから」
僕は、自分を守るために、また、それ以上に、彼が僕を傷つけることで、これ以上、罪悪感にさいなまれることになるのも避けたかった。
「どうしたらいいんだ、君は傷ついているのに、君を見殺しにしろというのか」
「傷はいずれ癒える。あなたがいてもいなくても」
僕は、冷たいように聞こえるかもしれないのを恐れつつも、それ以外、言いようがなくて、言った。
「俺には何もできないのか? 俺にできたのは、君を傷つけることだけか?」
「これ以上、僕を傷つけたくないのなら、もう近寄らないで」
僕は、自分の身内に宿る、近づきたいという欲求にあらがうように言った。
「もう何もできないのか?」
「何もできない」
僕にそう言わせたのは、僕のせいじゃない。半分は、彼のせいだ、と僕は言い訳のように思った。
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