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一人戻ったエイラートに少年が尋ねると、エイラートは答えず
違うことを口にする
「あの人たちはあなたが孔雀石だと思っているみたいだ」
「…どうして」
「あなたに記憶がないからさ
鉱石から人間になったばかりで不安定だからプールに落ちたくらいで記憶をなくすんだって」
「皆がそう言ってるの?」
「ぼくもそう思ってるよ」
エイラートは少年の前に立ち、冷たい青緑の瞳で見下ろした
「あなたが孔雀石なんだ
標本箱に戻されるのが嫌で記憶を失ったなんて嘘をついているんだ」
「僕のどこが鉱石だって言うんだ?」
思いも寄らない方へ話が向かい、少年は否定するがエイラートは取り合わない
長椅子に座る少年に覆い被さるように体を重ねた
「口ではなんとでも言える
でもぼくらが欲しいのは証拠さ
あなたが孔雀石じゃないという」
「僕は、…違う」
「そう思いこんでいるだけ」
エイラートの白い腕が長椅子に押し付けられ、少年の動きを封じる
「試しに想像してみて
自分が孔雀石だって
さっきまで標本箱の中で眠っていたんだよ」
小さく笑いを溢すエイラートの唇が少年の唇を塞ぐ
冷たく、濡れている
目を見張る少年を深い青緑の瞳が瞬きもせず、吸い込むような螺旋を描いて捕らえた
その螺旋階段を抜けると赤と黄色と桃の金魚草がちりばめられた水に落ちる
水は温かく優しく少年を包み
その感触は懐かしい時間に似ていた
(もし僕が孔雀石なら)
碧い水は孔雀石の翠と混ざり、薄い天蓋となり少年にまとわり
それはまるで孔雀石の卵
いつしか周囲の水は黒い土に変わり、悠久の時の中で僅かばかり変動する銅鉱床の上、
少年は孔雀石に同化していた
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