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じゅういち
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「よーっす!はよー!」
「あっくんおはよー」
「おはよー旭ー!」
教室にピョンと入れば口々にクラスから旭に向けておはようの挨拶が交わされる。
「あ、おはよー、田端ー!」
「えっ……お、おはよう……」
朝から椅子に座って本を読んでいた田畑が目に入ってわざわざ田端の目の前にまでやってきて挨拶をする。俺はこれをここ毎日やっている。
そう、あの日田端と話してから俺は学校でも田端と関わりを持とうと思ったのだ。
朝からポツンと1人で本を読んでいる田端。普段田端は1人でいると思うけど移動教室だったり体育のときは誰かしらといる(戸田くんとか)。だから別にボッチってわけでもねぇと思うけどこうして本を読んでいるときは1人で集中しているから、あー、邪魔しちゃったなぁ、とか思うけど…でも田端は挨拶を返してくれる。
すっげぇ、吃ってるけど……。
パッと顔を上げたかと思えばすぐ目を逸らされて弱々しく挨拶を返される。
「旭〜田端怖がらせんなよ〜」
「何ちょっかい出してんだよ可哀想だろー?」
高岡と北村にそうどやされる。いやいやいや、俺別に怖がらそうとか変に絡んでる訳じゃないんだけど…。それでもやっぱ側から見ればそう見えるらしく……カフェであんなちょっと喋ったくらいで心開いてくれないか、と思いながら自分の席に着く。
高岡と北村がやってきて、
「お前何、最近めっちゃ田端に話しかけてんじゃん。なんでだよ」
「…なんとなく」
「こんなチャラチャラした奴に話しかけられて…田端も可哀想に」
「おいてめぇどういう事だよ」
グーで北村の肩を殴る。
肩を抑えながら蹲る北村を鼻で笑っておく。高岡が、
「にしてもね〜、なんとなくって」
「あんま喋ったことない奴とも喋ってみようかなー、なんてね」
「へー、田端とかなんか喋り辛くね?こう、あんま話してくれそうな雰囲気っつーかさぁ」
「まあ、最初はそんなもんかも。でもあいつ本の事になると結構喋ってくれんのよ」
なんだなんだと、痛みから立ち直った北村が俺と高岡の顔を見る。と言うのも、とこないだカフェで田端に会った時のことを2人に話した。
「へー、意外」
「本当に本好きなんだな」
「まあ、俺はその後良子に買い物頼まれたから出てきちゃったんだけどさ」
俺の話を聞いてへぇと言いながら2人は黙々と本を読み続ける田端の方を向く。あの田端がそんなテンション上がって喋るようには見えないけどなぁ、なんて言いながら。俺だってビックリしたけど。でも、そんな田端の何気ない一面を知れただけでも俺は嬉しかったし。
すると北村がスルリと田端の座席の方へ歩いて行った。
「あ、おい」
「??」
「なー、たーばた!」
「っ…??」
急に北村に話しかけられた田端はビクッと肩を震わせ本で口元を隠した。
「こないだ旭と駅前で会ったんだって?意外に喋るんだな!もっと皆なと絡めばいいのに〜」
「っ……え、ぅ…」
ぐいぐいと話しかける北村に対し狼狽する田端。
「あいつ何やってんだよ…」
はぁとため息を吐きながら高岡が北村の元へ行き、
「お前やめろ!…ごめんなぁ田端ーこいつがイキナリ。おら、戻んぞ」
「うわ、ちょ、首っ!首しまってるぅう!!」
高岡がにっこりと田端に笑いかけながらの北村に腕を引っ掛け俺の席へと引っ張ってくる。ギブギブと呻きながらとんとん高岡の腕を叩く北村。
「お前さぁ、なにしてんの」
「いやなんか田端しゃべるかなーって」
「んな、あんなイキナリ行ったらビビるだろ」
田端は本の事で凄い俺に話してくれただけで普段から喋れるようになったかと言われれば絶対違うし。少しずつ、少しずつ打ち解けていけたらいいなぁと思っていたから北村の奴余計な事しやがって、の意味も込めて今度は机の下から脛を蹴ってやった。つか、ちょっかいかけてんのはお前の方だろ!
そしてなんとなく田端の方を見れば凄い困った顔をしてこっちを見ていた。そして俺と目が合うとすぐ様顔をバッと背けられてしまった。
あぁあ、もー、くっそ、
やっちまったなー……。
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