アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
じゅうよん
-
「んじゃあ、川崎。よろしくな?」
「へー」
俺にホチキスで留めた何枚かの紙とペンを渡して徹ちゃんは図書室を出て行った。
って言うのもさ、
「徹ちゃーん、来たよー」
「おー」
放課後担任に言われたように図書室に行けば徹ちゃんが段ボールの箱を開けて何やら作業をしていた。
「コレな。コレ片して欲しいんだよ」
「俺がぁ?なんでよー」
段ボールの中を覗き込めば色んな本が敷き詰められていた。こんなん図書委員がやればよくない?
「図書委員の奴らみんな私立図書館行ってんだよ。んで、俺が代わりにやりたかったんだけど職員会議入っちゃってな?んで、お前に頼んだわけだ」
「はー…だるー」
「お前普段俺の授業マトモに受けてない罰だと思えよ?いや、罰とは言わず書庫整理だと思って前向きに仕事しろ」
コレとコレとコレ、なんて箱を3つも置いていく。めちゃくちゃ多いって訳でもないけど地味に面倒くさい量だった。つか、そもそも俺あんま図書室とか来ないし本が何処にあるとか分かんないんですけどー、とでも思ってればそんな俺の心を見透かしたかのように徹ちゃんが俺に数枚の紙を渡してきた。
「とりあえず紙に書いてある番号の棚に背表紙のラベルの番号一致させて並べといてくれればいいから。できたら段ボールそのままで帰っていいぞー」
そして冒頭に戻るわけ。
別にいいけどさ…。
図書室には図書委員が居ないからか人は疎ら。机で本を読んでいる人も数人しかいない。
早い所終わらせてとっとと帰りたい。今日は見たいテレビ番組もあるし腹も減ったしな。
ペラペラと紙をめくりながら本と照らし合わせていく。
たまに休憩を挟みながら本を片付けていく。ずっと文字とか数字見てて目がチカチカしてくる。眼薬欲しい。外は薄っすらとオレンジ色が差し段々と夕方の風景に変わっていた。
片付けを再開してあと何冊かの所まで来た時だった。どうしても場所が分からない本が出てきた。
「はぁ?“B-6 た”ってここじゃねぇの?」
どうしても紙の一覧と本のラベルが合わなくて。
この本は後回しだと他の本を片付けていく。
「で。これどーするよ」
図書室にいる人に聞けばいいんだろうけどもう日も暮れてきていた。残っている人はおらず、どうやら図書室にいるのは片付けしている自分だけのようだった。うわー、これ鍵も職員室持っていかなきゃなヤツじゃん。とか内心悪態ついて。はぁ、なんて無意識にため息が口から漏れる。
これだけ場所分かんなかったって徹ちゃんに明日言えばいいかなー、なんて本をカウンターに置こうとした時だった。
「あっ……」
「っ…?!」
入り口の方で声がして、その声にカッコ悪くもめちゃくちゃビックリしてガタッとカウンターに足をぶつけてしまった。
なになに、まだ人いたの?
誰もいないと思ってた時の物音や声程怖いものはない。
パッと入り口付近見遣るとそこにいたのは、
「あれ?…田端?どーしたんだよ」
「え、……あの」
なんと田端が立っていた。まだ学校いたの?なんて疑問が浮かびながら話しかける。
「本持ってるけど…返しにきたの?今日図書委員いないらしいよ?てか、珍しいな、こんな時間までいつもいたっけ?」
「あの、違っ……す、数学で分からない所があった……から、先生と話してて、それで……」
俺がどんどん質問しちゃって田端はあたふたしていた。どうやら本を返しに来たわけではなさそうだ。
「なるほどね、で、どうして図書室?いきなりいるからビビったわー、焦らすなよなー」
「ご、ごめん…」
俺がケラケラ笑いながら言えば田端は本当に申し訳なさそうに謝ってくる。いやいや、そんなマジで謝んなくてもいいのよ?俺も冗談交じりだし?苦笑いして田端に近づけば、
「こ、これ!……か、川崎く、んのだから……それで…」
スッと田端が目の前に手を差し出してきた。手に持っているものを見れば俺の定期入れだった。
「え?マジ?!何処にあった?教室?」
コクリと頷く田端。
「話し終わって、教室出ようとしたら……川崎君の、机にあるの気付いて………職員室届けようと思って……そしたら図書室電気付いてたから…この時間まで珍しいなって………覗いたら、か、川崎君いたから…」
「まーじか!うわー!よかった!サンキューな、いやマジで。これ気付かねぇまま駅まで行くところだったわー」
ポツリポツリと丁寧に話す田端。定期を届けてくれたのには本当に助かった。あ、田端なら分かるんじゃね?この本の場所。
そう思ってカウンターに置いた本をまた手に取る。
「なぁ、この本何処おけばいいとか分かる?」
「え?」
はい、と田端に本を手渡せば田端は本のラベルを見て首をかしげる。
「ん……多分、こっちだと思うよ」
自分の持っていた本や教科書、荷物をカウンターに置いて迷うことなく目的の本棚へ向かう田端。さっすが。
「…多分この上だね」
「は、マジ。誰があんな所の本読むんだよ」
俺ら二人共、170はある筈だがそんな俺らでもそこまで簡単には手を伸ばせなさそうな高さの棚がその本の置き場所だったようだ。そんな高さの棚がある故にこの図書室にはそれ用に小さい脚立の様なものが置いてある。田端がそれを持ってきてヒョイと乗り、目的の場所へと本を押し入れる。
「ここ……だね」
「さんきゅー!助かったわー!明日徹ちゃんに言っておこうかなーって思ってたからさー!流石田端!」
俺がお礼を言うとハニカミながら笑顔でうん、と返してくれた。
そのままそろそろ帰ろー、って俺がそう言いかけた時だ。
田端が降りようとした脚立が僅かにグラついた。
「うわっ…」
「!」
気付いたら田端の腕を掴んだまま後ろ向きに抱きとめていた。
「っぶねー……田端大丈…っ」
顔を覗き込んでドキッとした。
田端の顔が真っ赤になっていた。
すぐに俺が掴んでる腕とは逆の方の手で口元を抑えながら。
「ご、ごめん…!」
「あ!ちょ、田端?!」
突然俺の腕をバッと振り払いカウンターの荷物を持って一目散に図書室から出て行ってしまった田端。え?なになに?なんなの?!
普通ここでお礼くらい言えよとか思うんだろうけどそんなんどうでもよくなるくらい。てか、それどころじゃない。
「……何で俺こんなドキドキしてんの」
おかしいっしょ。
「おーい!川崎まだいんのかー?終わったのか?」
「徹ちゃん、俺ヤバいかも」
「はぁ?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 41