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眠れる森(2)
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千早は開いたドアをひとしきりぼうっと見つめたあと、口元に付着した血液を拭って言った。
「俺はもう、とっくに死刑だね」
転がった少年の死体を蹴飛ばし、目線を合わせるようにしゃがんだ彼の指が千早の顎を掬う。
濡れた唇を撫で、口内に侵入したぬめった舌が歯の表面を磨くように蠢く。千早は眉を寄せ、けれど抵抗はしないまま、奪われるために目を閉じた。
♢ ・ ♢ ・ ♢・ ♢
「ここが千早の家?」
おっきいねぇ、そう感嘆の声を上げる葵に千早の頰が緩む。
「あがって。葵の好きな、チョコのアイスが冷えてるよ」
「アイス!」
大好物を前にすっかりご機嫌になった葵を自室に通すと、約束通り先日買ったばかりのチョコレートアイスを食べさせてやる。
ちびちびと少しずつ、大切にアイスを食べる姿は小動物を連想させる。時折うかがうように首を傾げてこちらを見る葵のことが愛しくてたまらない。その度に千早はゆるやかに微笑むのだった。
「ごちそうさまでした」
きちんと手を合わせ、葵は合掌する。
それが解けてしまう前に、千早は腕を捕まえる。
「わ、」
ぐいっと引っ張って、華奢な身体を腕の中に収めた。
「…千早?」
「あおい」
甘い声で呼ぶと、面白いほどに葵の顔は朱に染まる。
色素の薄い、まあるい瞳。じわっと湧き出た光の膜が覆い隠そうとするけれど…千早はそれよりもはやく、葵の唇を塞いでいた。
「…ん…ン」
唇をぺろりと舐め、薄く開いた隙間から侵入する。ひくひくと怯える舌に自身の舌を絡め、優しく吸い上げるように慰める。
上気した顔で、葵が泣いた。
「…ちはやくんの、いじわる」
涙目で呟かれた、初めて出会った時の呼び名は、千早の気持ちを昂らせるのにはじゅうぶんすぎるほどだった。
ネクタイを抜き取られながら葵は眉を下げ、それでも歓喜に満ちた仕草で千早のシャツをぎゅっと握る。
上から3つ目の釦を外した時、白い首筋がその姿をあらわした。
しかしいつもの場所に唇を寄せ、深い場所に歯を埋めようとした時、ぴくりと葵の肩が跳ねる。左手で背中をさすり、
「こわい?」
と聞くと、小さな声で「すこし」と鳴いた。
けれどいざ千早に貪られると、そこから与えられる愉悦に溺れてしまうことも葵は分かっている。
「でも、いいよ」
葵は目を閉じ、懇願するように言った。
「ちはや、僕を食べて」
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