アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
眠れる森(6)
-
「………っ………!」
縋り付くように服の裾をぎゅっと握るのは、血を吸われる時の葵の癖だ。じゅ、と音を立てて傷口から溢れ出した血液を啜る。
鏡の中で、視線が絡み合う。
苦しげに寄せられた眉とは反対にらんらんと光る瞳。震える赤い唇。アンバランスで、エロティックな表情をする葵に、千早は狂ってしまう。
「……わかった?」
「…きゅう…けつき……?」
見せつけるように耳朶に舌を這わせて言う。
「せいかい」
「先生は千早と同じ、吸血鬼…なの…?」
「うん、たぶん。というよりは、確実に」
「…なんでわかるの?」
「においだよ」
「におい?」
「そう、におい」
傷を刺激しないように、傷口がついていないほうの首筋に顔を埋める。クッキーのような、ショートケーキのような甘い甘い匂い。
吸血鬼の大好物のにおい。
…それも特上な。
「俺は葵のにおいが好きだよ」
ぺろりと舐めて、囁いた。
「気をつけて、あいつはきっと葵を見つける。いつか必ず」
「……それが伝えたかったことなんだね?」
「うん」
驚くほど簡単に、葵は千早を受け止める。
「千早は不安なんだ」
千早は小さく苦笑して、
「…うん」
「……そっか」
ふふ、と葵は笑う。千早は唇でその首筋の骨の感触を辿りながら、はあ、と、濡れた吐息を吐き出した。
「不安だ、とても」
「こんなにそばにいるじゃない」
千早は2人以外存在しない、埃っぽい世界で優しい内緒話を仕掛けた。
「―・・・もっと近くにいきたい」
「ちはや…」
「葵、いい?」
「ここで……ここでエッチするの…?」
「うん。したい…ここで、いますぐに」
不安気に揺れる睫毛にキスを落とし、千早はシャツの釦に手をかけた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 6