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step up
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コンテストが終わり、控え室に戻ると直輝がいた。
「しょーちゃん、お疲れ様」
「ん」
有無を言わずに抱きしめてくる直輝の胸に頭をグリグリと擦り付ける。
今はただ、直輝に抱きしめられていたかった。
「祥?」
「やだ」
「なんだよ、やだって。おかしーの」
俺の髪をすぎながら直輝がくすりと微笑んだ。優しく髪を撫でるその手が俺を慰めてくれているのを感じる。言葉じゃなくて、直輝の全てで駄目な俺を受け入れてくれている。
それでもやっぱり悔しい。
「……なお、ごめんね。俺駄目だった」
「謝ることじゃない。胸張って俺に甘えていいんだよ」
「でも、俺本当は」
「いつまでも待ってるから」
「……」
「どれだけだって、俺は祥を待ってる」
直輝の手が頬を包む。あげた先には慈しむように笑んだ直輝がいて、俺は目の奥が暑くなった。
今回のコンテストに悔いはない。
でも、目標を乗り越えることが出来なかった。
コンテストの受賞者に奇跡にも名を連ねることが出来た。だけど俺は最優秀賞を取れなくて、特別賞を受賞した。
それはとても光栄なことだ。
でも最優秀賞じゃないと、直輝が今年でるパリコレの現場についていけない。
最優秀賞を受賞したものにはパリコレで手伝いをすることが出来るんだ。だから俺は、自分の力でその場に行きたかった。
だけど今度のパリコレに俺は行けない。
また、次を狙えばいい。でも、その間にも直輝はもっと遠くへ行ってしまいそうで、俺だけが何も手にしていない。
「祥」
「……なに?」
「俺のために頑張ってくれてありがとう」
「っ、別に直輝のためだけじゃないし」
「そうなの?」
「直輝と一緒に行けたらいいなとは思ったけどっ」
揶揄われて顔が赤くなる。
これ以上の弁解は逆に不利だ。そっぽを向いて腕の中から逃れようとしたのに、追いかけてきた直輝に捕まって、唇を奪われる。
「祥ちゃん可愛い」
「う、っさい、んッ」
啄むようにして残されたキスは、何よりも優しさのしるしだった。
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