アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
指令は?
-
「や、やっぱり……」
「ん?」
「だから! やっぱり……その、あれだから……」
「そのとあれじゃ分からないけど」
「〜〜ッ! 心配だから食えって言ってんの!」
分かっていたけど知らない振りをしたら
真っ赤な顔をして祥がおにぎりを鷲掴みにすると口に押し付けてくる
こんな乱暴にあーんをされたのなんて初めてだ
お陰で笑いは止まらないし
目の前の祥はいつ見ても可愛いし
3年最後の体育祭は今までの人生で初めて楽しいと思えた
「早くたべろよっ」
「可愛くあーんしてよ」
「な……っ」
「早く」
「〜〜っ、く、口開けて!」
「えー可愛くないー」
「お、俺は可愛くないのっ!」
「そんなわけないじゃん? 食べてください御主人様って笑顔で言ってくれたら食べる」
「言えるかこのバカ!」
グイグイ顔を空いてる手で押し返しながら祥が反抗してくる
本当思うけど
俺のことこんなに殴るのも祥ぐらいだ
他の奴だったら完璧相手にもしないけど
祥となると構いたくなるし
聖夜の視線は冷ややかなまま
「ほら聖夜が怒る前に早く」
「怒られちゃえよバカ直輝!」
「祥、早く言って?」
「〜〜ッ」
顔に張り付いてる手首を掴んで引き寄せる
キスができる程縮まった距離に
祥の瞳がユラユラと揺れていた
「言わないならこのままキスするけど」
「なっ、ダメ!」
「だったら言ってよ、ね?」
「なんでいつもそうやって……!」
「祥が好きだから」
「──ッ」
頭の後に手を寄せてゆっくりと顔を近づける
耳のすぐ横で祥にだけ聞こえるよう囁くと
ふわりと力が緩んでいった
「……そういうの、ずるい」
「そう?」
「……好きとか……そういうの急にいうのは……卑怯だ」
「でも好き。 祥だけにしか意地悪な事だってしない」
「……」
「祥は? 俺のこと好き?」
「……っ」
「聞きたい」
「うる、さい……」
人がいる前じゃいつもの倍で天邪鬼だ
いつもなら今頃顔真っ赤にしながら
好きぐらいは言ってくれるけど
人の目を気にしてるのか口を結んだまま
祥にとって人の目はやっぱり怖いんだろうか
仕方ない
本当に嫌がってることを強要するほど自己中なつもりはないし
俯いてしまった祥の頭をぽんっと撫でると
右手に持たれたままのおにぎりを一口食べた
「んー、美味しいよ」
「……」
「おにぎりも祥が作った?」
「うん」
「ありがとう、美味しい」
「……」
「……なお」
「なに?」
「…………。 好き、だよ」
ガヤガヤとこんなに五月蝿いのに
どうしてこんなにもハッキリと聞こえるんだろうな
沢山の声と音と笑い声で
かき消されたってなんの不思議もないのに
こんだけ小さな声だって拾ってしまう
微かに聞こえた
祥からの「好き」って言葉に似合わないけど顔が思わず緩んでしまった
「き、聞こえた?」
「ふふっ、うん」
「良かっ、んっ!?」
「ご馳走様」
驚く祥から顔を離す
ほんの一瞬だけ触れ合った唇が暖かくて
その温度は一気に全身へと駆け巡る
秋のそよ風に包まれながら暖かくて
馬鹿みたいに柔らかい体温
トクトク何度も鳴っている心臓は
これまた馬鹿みたいに祥を好きだとそう言っている
「〜〜ッ!」
「午後はしっかり競技出るよ」
「……っ、当たり前だ! 勝たなかったらお触り禁止だからな!」
「そりゃ大変だ。 頑張らなくちゃ」
「……頑張って。 俺、だって……やなんだから」
「え?」
「キス……出来なくなるの嫌だから。 ちゃんと頑張ってきて」
「あははっ! あーもう本当に可愛い」
「う、うるさい!」
真っ赤な顔をして
一言いうだけで今にも倒れそうな祥を抱きしめる
言葉足らずとか逆の態度取っちゃう事とか
そのことを気にしてるのを知ってるけど
それでいつか俺が愛想を尽かすかもとか
不安に感じてるらしいけど
祥だから好きなんだ
素直じゃなくても不器用でも天邪鬼でも
たまに漏らす素直な言葉が死ぬほど嬉しい
自分なりに伝えようって頑張ってくれるその姿勢だけで十分なほど暖かい気持ちになれる
このまま2人でどっか行きたいけど
約束もしたし頑張るとするか
祥と何だかんだ仲直りして
聖夜を弄ったり
陽とハルと久しぶりに会話をしながら
平和に暖かいお昼を過ごした
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
220 / 507