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指令は?
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後から後から続いて流れる涙を
直輝が笑いながら拭ってくれて
強く腕の中に抱きしめてくれた
その腕の中があんまりにも
安心して心地よくて
なのに色々不安はどうしても消えなくて
ちょっと違うってだけで何でこんなに物事は難しいんだろう
「祥ー、ほら大丈夫だよ」
「う……っ、ふ……ぅ」
「大丈夫。 きっとうまくいくから」
「……っ、うん」
「怖くなったら素直に言って。 もう隠さなくていいよ」
「ごめ、んね」
「謝んなって」
頭におでこをくっつけて直輝が
背中をさすってくれる
直輝が好きだけじゃあ
問題は解決しない
直輝はモデルで
いつか俺が重荷にならない保証はどこにも無いし
もしバレたら直輝はどうなっちゃうんだろう
そう考えるといつも怖かった
別れる選択肢はなくても
そうならざるを得なくなったらどうしたらいいんだろうかって
どうすれば直輝を守れるのか
やっぱり別れるしかないのかなって
そんな事ばかり最近は考えていた
「俺、祥のこと泣かせてばかりだな」
「そっんな、こと、ない」
「あははっ、嗚咽で酷いなぁー」
「うるっさい……!」
ケラケラ笑って直輝が鼻を摘んでくる
本当に守られている
俺がいつも泣く時
直輝はいつも優しく笑ってずっとそばにいてくれる
この前初めて聞いた直輝の本音
将来外国で暮らそうって話
それが現実になって欲しいって心から願う
もう今すぐ大人になってしまいたいし
俺達のこと知らない場所でならこんなに怖くないのかもしれない
だけど、それじゃあダメなんだ
逃げ込むようにどこかへいっても
乗り越えないで向き合わなかった現実は後からやってくる
どこへ逃げても必ずやってくる
「……ッグス……直輝」
「どうした?」
「まだ、怖いよ……いつかバレたら沢山の人に直輝が傷つけられて俺と居るのが苦痛になるかもしれない、そしたら俺別れなきゃならないのかなって」
「……」
「別れ、たくない……っ。 怖いけど、不安だけど、それでも辛くても別れたくない」
「別れない。 大丈夫」
「でも、保障なんかどこにも無いだろ……っ」
「……」
「だけど、本当に大人になっても俺達まだ付き合ってたら……その時は直輝が話してくれたように2人でどこかでゆっくり暮らしたい」
「……うん」
「そうするまできっと大変だけど……難しいこと沢山だけど……っ、頑張るから……」
「俺も一緒に頑張るよ」
「──っ」
「一人で乗り越えようとすんなよ。 俺と一緒に頑張ることだろ」
「ふ、っうー……直輝ぃ」
「あーあーすごい泣いてんな」
胸に突っかかっていた一番の事
始まったらいつか終わりがくるって現実
その現実が怖くて
それなのに日に日に直輝を好きになっていく気持ちが怖くて
幸せがずっと続いて欲しいって
願うぶん悲しい気持ちがついてまわっていた
願うことがまるで終わりを受け入れてるみたいで
そんな自分にも嫌気がさして
だけど目の前の直輝は大丈夫って言った
保障なんかないくせに
当たり前のように大丈夫だって
そんな事ばかり言ってって思うのに
直輝の大丈夫って言葉一つで喉に詰まるように苦しさを訴えていたものが溶けていく
直輝の大丈夫は魔法みたいだなんて
いつだってそう言って俺の背中を押してくれてた直輝は、今もこうやって優しく手を握って傍に居てくれる
「直輝……っ、好きだからね」
「あははっ! 知ってるよ」
「俺、ちゃんと直輝のことっ……大好きだからね……っ」
「うん、伝わってる」
今はまだ伝えるので精一杯だけど
だけどちゃんと直輝が立つ場所まで追いつくから
地位とかそれだけじゃなくて
気持ちとして、同じ場所まで
直輝みたいに堂々と居れるぐらいちゃんと強くなる
直輝だけじゃなくて
俺も笑い飛ばせるぐらいの大きい人間になるから
だからずっと傍に居たい
「はー、もうこのまま帰っちゃおうか?」
「ダメだよ……聖夜が困る」
「こんな時まで聖夜の心配なんかすんなよ俺が出なくても他の誰かがいる」
「でも」
「だけど祥を慰められるのは俺しか居ないだろ?」
「ば、バカ言うなっ」
ニヤニヤ笑った直輝が俺を抱きしめたまま寝転ぶ
中庭の芝生の上に2人で寝転んで見上げた空はどこまでも高くて清々しいほどに青一色だ
「俺も空みたいになりたい」
「……祥泣きすぎて変になった?」
「違うよ……俺も青一色みたいになりたいってこと」
「ああ。 でも空だって晴れたり曇ったり人の気持ちとそっくりだろ」
「……」
「それ一つを突き通す事も大切だけどさ、気持ちを押し殺してまで突き通さなきゃならないような関係は嫌だ」
「……うん」
「素直に泣いて笑って、それでも一緒に居るってそう思えるようにいたいよ俺はね」
「……俺も」
「だったら我慢しないこと、どうせ直ぐにバレるんだから」
「う、うるさいな」
「昔っから隠すの下手だからな祥は」
「……」
柔らかい笑顔を浮かべて直輝がぎゅっと強く抱き寄せてくる
そのまま俺も胸に顔を埋めると
髪を梳いてくれる直輝に身をゆだねた
「このまま寝ちゃおっか」
「……」
「きっと聖夜が起こしにくるだろ」
「怒られるね」
「だな」
きっと聖夜に怒られる
はぁってため息つかれて
でも仕方ないなあって許してくれて
直輝はまたヘラーって笑うから
聖夜が直輝を叱って
昔も今も変わらない事も沢山ある
俺達の関係みたいに
変わっても変わらないまま残ることがある
きっと、未来もそうであるように
そうだって信じるしかできないけど
直輝の腕の中で眠るのは幸せだから
その幸せを無くさないように
1日1日大切に過ごしたい
秋空と遠くで響く楽しそうな騒がしい体育祭の音を聞きながら、俺と直輝は小さく抱き合って眠った
結局俺達は俺達なんだって
他人も気になるけど最後はやっぱり
俺達がどう思うかなんだってこと
直輝に抱きしめられるのが好きだから
絶対離れたくないなぁとか
そんなありきたりな理由だとしても
そういう沢山の理由が
これからもっと増えていけば
きっと大丈夫かもしれないなんて
そんな事俺まで思っちゃうほど
直輝の隣は心地いい
眠りに落ちていく中で
そんなことを考えながら
俺も直輝の背中に腕を回して抱きついた
◇◇◇◇
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