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あの日の続き
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***
「お疲れ様でしたー」
今日の撮影予定も無事に終わり
皆が深夜のスタジオを後にする
俺も爽と共に入口へと足を運んでいたけど
この前から突っかかって仕方ないこの不快感をはらうために爽を先に帰らせて控え室へと戻った
「……祥、居る?」
ヘアメイクが使う控え室をノックして返事を待つ
いくらか待っても返事がない部屋は案の定もぬけの殻でこのまま大人しく帰ろうかと迷い出した時撮影の為に使われるスタジオから誰かが出て行く後ろ姿が見えた
「紺藤……?」
色素の薄いクリーム色の髪を揺らしながら歩いてくそいつは確か見覚えがある
俺の見間違いじゃないならきっと紺藤結葵だろう
そうすると祥もスタジオの中に居るのかと確かめに中を覗くと案の定祥だけが残って片付けをしていた
「お疲れ様です、これ片付けたら直ぐに出ますね」
そのままゆっくりと中に入ると人当たりのいい明るい声で祥が挨拶をする
俺に背を向けて急いで用具を片している祥は警備員かスタッフかと間違えているらしい
そのまま距離を詰めると返事のない誰かに不審を感じたのか後ろを振り返って確認するなり俺と分かった途端、表情を隠した
「……お疲れ」
「……」
俺とは話す気が無いのかお疲れと声をかけた途端に再び背を向けて乱暴に荷物を片し始める
その行為にほんの少しばかり胸が痛むと同時にここ数日の余裕の無さからなのか苛立ちも芽生えた
「俺とは話したくない?」
「……」
「祥」
「……関わるなって言った」
「……」
「そしたら直輝も承諾した」
「そうだったな」
「だから話さない。 それだけ」
確かに……
俺も承諾した。頷いた。
だけどその時は祥が何か隠している事に気づいて一度身を引いた方がいいと思ったから。まさか祥と紺藤がデキてるとは、思ってもみなかったし俺にも俺なりのケジメがあるんだ
「今度は嘘無しで話したい」
「ッ!」
「前、俺に嘘ついたろ?」
「……」
「いや、咎めてるとか責めに来たんじゃなくて……俺が考えてる通りならしっかりと終わらせたい」
「終わるも何も──」
「終わってない」
まだ話している祥の言葉を遮る
祥の中では例え終わっていても過去になっていても俺の中じゃ終わっていない
祥が今を幸せだと思えていないなら
「……終わったよ。 もう、終わったんだよ直輝」
「終わってないだろ何も」
「じゃあなんで直輝はあの日俺に好きだった、って言ったの?」
「……」
「直輝も終わったって感じたから俺に過去の言葉として、だった、って言ったんじゃないの?」
「それは……祥が必死で何かを隠してるから、嘘ばかりつくから」
「……例えば俺が嘘をついたんだとしても……直輝のその言葉は関係ないし嘘じゃなかった」
俺を見てそう話す祥の言葉に動揺してしまう
確かにその通りだった
初めての祥の拒絶に
俺はその瞬間祥との関係の修復を諦めたし終わったと感じていた
だから思わず溢れた言葉は
今でも祥が好きだなんてまっすぐなものではなくて情けない事に好きだったなんて過去の言葉
その事実を祥に見抜かれていた事に思わず言葉が詰まる
「否定しない……確かに終わったと思った」
「だったらもう話す必要なんかないだろ」
「違う」
「……何が」
「本当に終わりにしたいなら……あんな嘘じゃなくて夢とか仕事とかそうやって三年前の約束を利用しないではっきり言えよ」
「はっきりって……だから」
「紺藤結葵と付き合ってるんだろ?」
「ーーッ」
「あの日見た。 祥とアイツが……抱き合ってるの」
広いスタジオにけたたましい音が響く
祥の手から滑り落ちた道具箱から床に散らばる道具が弾け飛ぶ音
ガシャンガシャンと音を立てて割れる硝子の入れ物はもう三年前のあの日の続きを始めることは出来ないんだと教えるように儚く割れていた
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