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月夜の庭、踊る星
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バタバタと人の隙間をくぐって走り抜ける
必死になって一体俺は何から逃げてるのか分からなくなりそうだ
もしかしたら本当に相手は違う人かもしれない……けどもしも俺が想ってる人だったら?
あのまま抱き合って、どこかの映画みたいにワルツを踊って、仮面の下で悲しい顔を隠して踊る時間が終わったらまた離れなきゃならないなら一瞬でも一緒に居たくない
少しでも決意が緩んじゃえばきっと吐き出してしまう
何を隠してるのかもどうして離れたのかも言わなくていい事まで隠すと決めたことまで全部、全部、その腕のなかで全てをぶちまける事が怖かった
「待って!」
「ッ、はぁ、はぁ……」
階段を駆け上がって人気のない廊下を走る
それでも追いかけてくるその人から逃れたくて横にあった適当な部屋の扉を開ける
「祥!」
「ーーッ」
だけど名前を呼ばれたその一瞬
戸惑ってしまった
やっぱり直輝なんだと、勘違いじゃなかった事が苦しいのに触れ合えたのが嬉しくて悲しい
立ち止まった一瞬の間に滑り込むようにして入ってきた直輝とぶつかりあった体は二人揃って静寂に包まれた真っ暗な部屋へと倒れ込んだ
「うっ、……」
「っ祥!」
「や……」
「祥聞いて」
「嫌だ!」
「お願いだから……ッ」
「離せってば……っ! 話さないって約束しただろ……嫌いだって直輝の事もう好きじゃないって言ったのにどうして来るんだよっ」
「……っ」
「っ、俺……だって……馬鹿直輝っ、も……やだよ直輝」
「ーーっ」
床に倒れ込む俺の上で直輝が息をのむ音がした
それから直ぐに「ごめん」と震えた声が耳元で聞こえてきた数秒後、懐かしい温もりが唇に触れる
「ッ!」
「ごめん祥……っ、でも、好きだ」
「な、おき……、だめ……ッ」
「本当に嫌なら殴って逃げて。 本当に俺が嫌いなら今すぐ突き飛ばしてここから出ていって構わない……祥なら俺のこと押し退けるくらい出来るだろ?」
「〜〜ッ」
「でも……止められないならもう辞めない。 祥が全部話してくれる迄辞めてやらないから」
「ふ……っ、んぅ……!」
覆いかぶさった直輝が仮面を取って床へと投げ捨てる
窓から差し込んだ儚い月の光が切なげな直輝を照らしていて息を呑んだ
真剣な眼差しも熱い温度も早い鼓動も
直輝が目の前に居ることが嘘じゃないと知らしめている
ゆっくりと近づいてくる綺麗なその表情に目が離せなくて、床へと貼り付けられていた手はいつの間にか自由になっていて自ら伸ばした先────直輝の背中へと抱きついていた
止められない
ガンガンと鳴り響くこれ以上は駄目だと警告するサイレンも今迄の耐えた事が水の泡になる事も、三年前にあれだけ決めた覚悟も全てが溶けていく
もう止められない
そう二度目に感じた時には
直輝のキスに身を委ねたまま全てのことから目を背けた時だった
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