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酔っ払いと意地っ張り
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そんな訳で、折角の送別会も俺と直輝は別々の席に座っていた。それも態々反対側で遠くの斜め前に新人の女の子達に囲まれて。
「……女好き」
「どうしたの? 祥なんか言ったー?」
「何も言ってないです」
「そう」
瑞生さんがお皿に頼んだものを分けてくれながら振り返る。ありがとうございます、とお皿を受け取ると頭を撫でられた。
多分きっと俺と直輝が喧嘩してるの気づいてるんだろうな。
「あの、瑞生さんも食べてください。 俺が分けるんで」
「いいんだよ。 今日の主役は祥なんだから皆とお酒飲んだり楽しんで。 いつもやってくれてたしね」
本当に瑞生さんは優しい。ずっと変わらないし、いつでも気が使えるし直輝と違って意地悪でもない。
隣に座るオーナーに肩を組まれながらチビチビお酒を口に含んで直輝を見遣れば怒りで思わずグラスを割りそうだった。
……なんで手なんか握る必要あるんだよ。俺が同じことしたらめちゃくちゃ怒るくせに。
「……ッ」
「おい祥〜なにムスッとしてんだよ? 酒か? 酒ならたんと飲め! ほれほれ」
「あっ、俺日本酒……酔っちゃう……」
「いいじゃねーか! 酔うまで飲ませろよ……俺の可愛い天使が店から居なくなるだなんて……ウゥ……クゥ」
「……オーナー鼻水出てますよ」
「俺に優しいのは祥だけだったのに……ッ!」
酔うと大変面倒くさいオーナーはもう既に出来上がってるのか鼻水を流して泣いている。笑いながらおしぼりで鼻水を拭いたら組まれていた肩は開放され、代わりに前から思い切り抱きつかれた。
わんわん泣くから折角の男前が台無しだ。でも確かにこうして皆と楽しく話したりたまには仕事の事で揉めたりなんて出来なくなるんだよね。そう考えると俺まで少し釣られて泣きそうになる。
「オーナー! 今日は沢山飲みましょ!」
「おう! 吐くまで飲んで吐いても飲むぞ!」
「それはお店の迷惑になるんで吐くなら外で。 それとオーナーは明日朝勤務ですからね」
「うっ……椎名ぁ〜冷たいこと言うなよ〜」
「冷たくないですよ、俺はオーナーの身体を心配してるんですから。 ね?」
「……椎名怖い。 祥、椎名とても怖い」
「あははっ」
真っ先に釘を刺す瑞生さんにオーナーもたじたじで。
一番お世話になっただろう二人の間に座りながら俺も送別会を楽しむ事にした。
もう直輝の事気にしてたら本当に落ち込んで終わっちゃうし。俺と付き合ってる事なんて新人は知らないんだから妬くのも何だか悪い。
情けないしかっこ悪い。
それに直輝だってきっと、芸能人だって事もあって振り払わないんだろうし。
だったら気にしちゃ駄目だ!
俺も暫くしたら直輝の隣に行こう。その時にでも謝れたらいいなぁ……
「祥ほんとに大丈夫?」
「あ、はい! もう大丈夫です、それより瑞生さんも飲みましょ!」
「そうだね。 うん、飲もっか」
「ふふっ、じゃあ俺が注ぎますね」
「ありがとう」
忙しなく動いている瑞生さんにお酌して、日本酒をどんどん空けていく。
瑞生さん結構なザルだからスピードも早ければ飲む量も凄い。俺も釣られて飲むけど飲んだばかりだって言うのに酔ってきた感覚が全身に巡っていた。
でも今日は飲んで大丈夫な日だからいいんだ!
外でお酒は禁止だって直輝に言われていたけど、気兼ねなく飲めるようにって今日は直輝が付き添ってくれて居るしだから飲んでいいよって言われてたからちょっと楽しみにしてた。
いつもならこの辺りで辞めて大人しくソフトドリンクを飲んでるけど。皆と気にせずに同じお酒を飲めることが嬉しくて、思い返せばこうして飲むのはかなり昔のカラオケ以来だって事に気づいたら何だかテンションが上がる。
「あれ?! 祥君もお酒飲んでる!」
「あ、はい。 今日は良いかなぁって、えへへー」
「レアだレア! じゃあ俺らとも飲もうぜ」
「はい!」
いつも拒否していたからか気づいた先輩達がお酒を片手に隣へやって来る。
仲良くしていた先輩も周りにやって来て、色んな話しで盛り上がった。
オーナーと先輩が飲み比べ始めたら、女性スタッフからは「品がない」って悪く言われたりもしていたけど。
それでも皆楽しく笑ってたし、俺も凄く楽しかった。
なんてことない事で沢山笑って、またお酒を飲んで。気づけば顔が熱くなってるのに自分で自覚があるほど飲んでいた。
直輝がこっちを見ているのも気づかないで。
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