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傷だらけのラブソング
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「──あ……っ、う、結……葵!」
「ッ!」
「けほっ、う、お前……ひ、との首絞めといて、っクソ」
ああ、いけない。またぼんやりしていた。
どうにも雨の日は気が散ってしまう。気付けばぼんやりと意識がどこかへ飛んでしまう。
ガリッ、と鋭い痛みが手首に走り、苦しみに喘ぐ爽さんの爪が肌を引っ掻き抉ったのだと気づいた。
余裕なく結葵と名前で呼んでしまうほど、爽さんの首を酷く締め付けていた手を緩めれば、途端に送り込まれた空気に噎せた彼は涙を流し僕を押し倒す。
見下ろしてくる表情がやけに悲しそうに見えた。それはきっと、この部屋が暗く、窓の外が雨だからだろう。
「なに、考えてんだよ」
「……昔の事を」
「俺の中に突っ込んでおいて余裕だな」
「そうですね。 僕はこれと言って興奮も感じて居ませんし」
「な、っ! 糞野郎!」
「……今更でしょう。 抱いて欲しいと言ったのは貴方です」
胸ぐらを捕まれ頭が浮く。苛立ちを宿す眸に口角を少しばかり吊り上げ見上げれば、彼はおもむろに手を離した。
「何考えてんのか分かんねぇよお前」
「……」
「……嫌なら抱かなきゃいいだろ」
「あの日のこと」
「は?」
「あの日、爽さんが初めて僕に声を掛けてきた日の事。 その事を思い出して居たんです」
「……一年前の擬似舞踏会の打ち上げ?」
「はい。 その日は今日よりも酷かった」
「雨が?」
「……それも、ですし、頭痛も」
「は?! ちんちくりん、頭痛いのか?!」
「……」
すっかりと萎えてしまった熱。驚き振り返った爽さんはギョッとした顔で髪に触れてくる。
……この人は本当に馬鹿な人だ。
「頭、痛いなら早く言えよな……薬飲むか?」
「……爽さん」
「ん?」
「萎えたんで、勃たせてください」
「……は?」
「僕のこれ、舐めて下さい。 好きでしょう? 咥えるの」
「……」
馬鹿な爽さん。僕に優しく手を差しのべてどうするんだ。優しすぎるのも本当に考えものだ。
祥さんにしろ、この人にしろ、苛立つ程にお人好し過ぎる。腹が立つから、酷くしてしまう。
「……は、ん……ん、ふ……ぁ」
「いやらしい顔」
「うるへー……らまって、感じれろッ!」
いつもは綺麗にセットをされている茶色の髪は、今日は外側へ跳ねる事もなく、セットされていない。
顔にかかった横の髪を数度、指で感触を楽しむ。そう言えば昔、サラサラ過ぎて整えるのが大変だなんだと嘆いていたな。触り心地がいいから、僕は気に入っていると言えば真っ赤な顔してうるせぇ!と怒鳴られた。
その細い髪を耳にかけてやれば口内に深く肉棒を咥えた綺麗な顔が見える。
「美味しいですか?」
「……ッんく……気色悪いこと言うな」
「何だか爽さんが犬みたいで。 もしかして馬鹿だから僕のペニスをアイスキャンデーだとでも思っているのかと」
「お前……ッ」
「歯、立てたら酷くします」
「この野郎!」
歯をむきだしに唸る姿は本当に犬のようでクスクス笑いが零れた。
もう一度手を伸ばすと先ほど満足する迄触れた髪に指を通す。
どうしてだろうか。
爽さんの髪を撫でていると何故か気持ちが落ち着く。激しい頭痛も心做しか緩やかになった気がした。
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