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客
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今日も来ている、ノリの煩い学生客。
まだ若いからか、店の雰囲気も察することなく毎回場違いな感じで盛り上がっている。
うちの店は客も多くないし静かに飲んでる人が多いんだよ……
これで何度目だろう。なんで毎回この店に来るんだ? 煩わしいと思いながら、俺は溜息を吐き酒を作る。
頭が痛い──
俺はこのバーの店主、塚原 悠(ゆう)。
独身独り者……
でもね、そこそこモテるんだよ。
男にも女にも。
今夜もバイト君たちに任せている店に少し遅れて来てみると、大学生だろうか? 賑やかに盛り上がってる男の子数人のグループが来店していた。
この子らはここ数週間のうちにちょいちょい来ていて、常連になりつつある。常連になってくれるのは嬉しいんだけど、この賑やかさはいただけなかった。
見ていると、何処か居酒屋ででも飲んでいて、その後の二次会的な感じで俺の店に来るみたいだった。だから毎回毎回、初めっからうるさく盛り上がってるのだろう。
「いつもありがとうございます。お客さん、いつもメンバー同じみたいだけどどんな集まりなんですか? 楽しそうですね」
灰皿を変えるついでに話しかけてみる。
客達は一斉に俺の顔を見上げ、一瞬時が止まった様に静かになった。
「うるさいですよね? すみませんっ! ……あ、あの、烏龍茶ひとつ下さい!」
グループの一人が真っ赤な顔をして、慌てたようにそう言った。
「……? 烏龍茶ひとつね。かしこまりました」
俺は注文を受けると、カウンターの中へと戻った。 バイト君に先程の烏龍茶を頼み、一服しに裏口から外へ出る。休憩室でもいいんだけど、外の空気が吸いたくていつもここで煙草を吸うんだ。
煙草、やめてたんだけどな……
気がついたらまた復活していた。
冷たい風が頬を掠めた。店内の喧騒が微かに漏れ聞こえ、外との対比に耳をすます。自分の吐く白い息をぼんやりと眺めながら、寒さに腕を軽く摩った。
頭上へと立ち上がっていく煙を眺めていると、表が少し騒がしくなった。
さっきの学生君たちが帰るのかな?
これでやっと静かになる……そんな事を思いながら俺は灰皿に短くなった煙草を押し付けた。
一応挨拶をしようと店の前へまわると案の定、先程の客たちが店の入口で屯していた。
表から店内に戻るついでにまた俺は彼らに声を掛ける。
店の前で騒がれるのも嫌だし、早くこの場から去ってほしかったから。
「もうお帰りで? いつもありがとうね……お気をつけて」
グループに軽く声をかけると、さっきの烏龍茶の子がいないことに気が付いた。
あれ? まだ店内なのかな?
「あ、ご馳走さまでした!」
俺の疑問をよそに、元気よく手を振りながらワイワイと帰っていく。
……まぁいっか。
少し気になったものの、俺は店内に戻った。
店内に戻ると烏龍茶の彼がカウンターの所でキョロキョロしている。
なんだ、まだ居たのか ……どうしたんだろう? 忘れ物かな?
「君、どうしたの? みんなもう行ったよ……忘れ物かな?」
後ろから声をかけると、面白いくらいビクッと体を震わせて驚いた顔をして俺の事を振り向いた。
「あ! あ、あ……いや、忘れ物じゃなくて……あの、いつもうるさくしてすみません。今日もご馳走さまでした!」
ぺこりと頭を下げて、ドタバタとそいつは店から出て行った。
もしかして、それだけ言うためにここに留まっていたのかな?
……変な奴。
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