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記憶のぬくもり
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頭が痛い──
またいつもの偏頭痛。
こうなるともう、何もやる気が起きないんだ。
これから買い物に行って、店に寄って……
面倒くさいけど、しょうがない。頭痛薬でも飲んでさっさと買い物行こう。
近所のスーパーに入り、必要な物をカゴに放る。
それにしても今日はなんでこんなに頭が痛いんだろう。
あぁそうだ……思い出した。
そういえば俺の住んでるマンション、来月から家賃値上げするんだっけ。
大した額じゃないけどさ、俺の偏頭痛ってこういうストレスからも来てるよなきっと。
あと、寝不足……
ボーッとする頭でそんな事を考えながら俺は買い物を続けていた。それでもいつもよりだいぶ調子が悪いのは明らかだったから、帰ったら一旦風邪薬でも飲んでおこうと会計に向かった。
フラフラするのを誤魔化しながら自動ドアを抜けると、外の眩しさに眩暈に似た感覚を起こしてしまい、どうしても足元がふらついてしまう。
あ……っと思った瞬間、誰かが俺を支えてくれた。
「大丈夫ですか?……具合悪いんじゃ 」
心配そうな顔をして俺の事を覗き込む男。
その顔に見覚えがあった。
「………… 」
「ちょっと、聞いてます? 大丈夫ですか?」
「あ……すみません。大丈夫です」
見た事はあるんだけど、どうしても誰だか思い出せない。いつまでも俺の腰を支えているこの男の顔を、俺はジッと見つめてしまった。
「さっきから見てましたけど、あなた熱でもあるんじゃ……」
不意にそいつの手が俺の額に押し付けられ、俺は驚いて咄嗟に手で振り払う。
「あっ、すみません……馴れ馴れしかったですよね……でも、熱! あるじゃないですか。どうりでフラついてたわけだ」
さっきから……見てた?
こいつ俺のことずっと見てたのか?
「俺、家まで送りますよ?……心配だし」
いやいやいや……
知らない奴にいきなりずっと見てた発言をされて、ホイホイ家まで送らせるかっつうの。
「いや、大丈夫ですから……ありがとうございました」
俺は結局そいつの事を思い出せずに、逃げるようにして家に帰った。
どっかで見たんだよなぁ。俺よりだいぶ若そうだけど誰だっけかなぁ……
とりあえず、風邪薬を飲んで少しだけベッドに横になる。
こういう時は決まって人恋しくなってしまう。
心細くて不安になる……
俺はこの先ずっとこんななのかな。
ぐるぐるする頭を抱え、布団の中で丸くなった。
あいつはこういう時、黙って背中から抱きしめてくれたっけ。
今でも耳元で「大丈夫だよ。俺がいてやるから安心して寝てろ」なんてそんな優しい声が聞こえてしまう。
いつ消えてしまうかわからないこの記憶の温もりに、俺はいつまで縋って生きてくのだろう。
そんな事を思いながら、俺は小さなため息を吐き少しだけ眠った。
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