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烏龍茶の君
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「あの……新規さんかな? なんか一人で来てる客が、マスターは店に来てるか? とか、具合悪くしてないか? とか、いろいろ聞いてくるんすよ。
悠さんの知り合いかな? って思って呼んで来ましょうか? って聞いたら、それはいいって言うから、なんかおかしいな……って思って」
元揮君が「ちょっと気持ち悪いっすよね」なんて心配そうに報告してくる。
それもそのはず……
元揮君がこの店に来てから俺は二度ほど、ストーカー紛いな被害にあっていた。
店で待ち伏せされてつきまとわれたり、店に通い詰めてた客が急に俺の恋人だと言ってある事無い事ふれ回ったり……そんなトラブルがあったのを知っているから、また警戒をしてくれているのだろう。そしておまけに元揮君は俺がゲイだという事も知っている。
でも、今言った元揮君の言葉を聞いて俺はピンときた。
俺の体調を気にしてるって事はきっと……
「多分それ、新規の客じゃないよ。俺知ってる奴だと思うからすぐ行くわ……知らせてくれてありがとう」
元揮君にフロアへ戻るよう言うと、俺は起き上がり乱れた髪を整えた。
もう頭もフラつかないし、頭痛もだいぶ和らいでる。これなら休まなくても大丈夫だな。
フロアに戻ると、元揮君と太亮君が二人でのんびりと店を回していた。
カウンターに最初にいた常連客ともう一人の男性客が離れて座っている。 奥のテーブルにはカップルかな? 楽しそうにイチャイチャしていた。
カウンターに座る客を見て、やっぱりな……と思った。
「なに? 俺のこと心配して来てくれたんですか?」
カウンターから少しだけ体を乗り出して、その男の事をジッと見る。
「そりゃ心配しますよ……あんなに顔色悪くてフラついてるんですもん。あれからちゃんと帰れましたか?」
「………… 」
やっぱり……
この前の、あのオドオドした感じの烏龍茶の彼とは別人みたいだ。よく見ると服装なんかもだいぶ雰囲気が違っていた。
「さっきは本当、ありがとうございました。たすかったよ」
一応、倒れそうになった俺を支えてくれたお礼をした。
「なんだ、悠さんの知り合いだったんですね。悠さん呼ばなくていいなんて言うから」
横から元揮君が割り込んでくる。
「………… 」
「あれ? 何か俺、変な事言いました?」
急に黙ってしまった烏龍茶の彼を見て、少し気まずそうに元揮君が言った。
「元揮君。わからない? 彼、この店よく来てるよ」
俺が元揮君にそう言うと、驚いた顔をしてう〜ん、と唸る。
「ね? わからないよね。だって……ねぇ、君……前とだいぶ雰囲気違うよね? どうしたの? イメチェン? ……もしかして双子……とか?」
黙っていたけど、俺が双子? なんて言い出したら、烏龍茶の彼はふふっと笑った。
……なんだよ、笑うと可愛いじゃん。
「双子じゃないですよ。はい……イメチェンしてみました。少しは大人っぽくなったかな。俺自身は満足なんだけど……どうですか? 悠さん……」
「………… 」
「あ、すみません。悠さんって呼んじゃった。マスターの名前、悠さんって言うんですよね。お近づきの印に、俺も悠さんって呼んでいいですか?」
元揮君だけ、わけがわからないといった顔をして俺を見てる。
そのポカンとした顔が面白くて、思わず元揮君の頬を指でつまんだ。
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