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笑顔
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少し懐かしく陸也との出会いを思い返していると、元気の良い声に現実に引き戻される。
「腐れ縁だよな。 高校からの付き合いだもん。な? 悠」
目の前の陸也が笑って俺にそう言った。
「高校からって……悠さんと陸也さんって今幾つなんですか?」
元揮君が驚いた顔で俺らに聞いた。
腐れ縁……
俺はずっと片思いだったけどな。
とっくに吹っ切れていたと思ってたけど、また昔のことを思い返していたら嫌な気分になってしまった。思い返せば思い返すほど、俺って女々しくて情けない……
なんでこんなにも長い間、思いを閉じ込めてきたんだろうな。
馬鹿みたいだ。
笑っちゃう……
「そういやさ、初めてここ来てから一年くらいはよく通ってくれたじゃん? それでも急にパッタリと来なくなったけど、どうして? その後また四年ぶりだって言ってさ、来てくれた時は嬉しかったけどその事には触れなかったから、ちょっと気になってた……」
思い出したついでだ……
俺は気になってた事を思い切って聞いてみた。
陸也は少し困ったような顔をして首を傾げる。
「……いや、別にこれといって理由なんかないよ。そうだなぁ、ちょっと忙しくなったからかな?」
何かを誤魔化すような感じにも見える。何か引っかかるところがあったけど、今更ぶり返すような事でもないし、第一陸也は今幸せにしてるんだ。
変に記憶を呼び起こしてないで、俺も早く前に進まないとな……
「独特な雰囲気……おふたりって付き合ってた事あるんですか?」
「………… 」
まったく、元揮君はズケズケと嫌な事言うよな。
「……そう見える? 付き合ってはいないんだよね。俺はいつでもウエルカムだったんだけどな、悠は俺なんか相手にしてくんなかったから……」
ふふっ……
陸也は調子のいい事を言う。
「そうだな。陸也はガキっぽかったからな」
ケラケラと笑う陸也につられ、俺も笑った。
そんなしょうもない話をして盛り上がってるところに、志音が店に来て陸也はデレデレしながら帰っていった。
「悠さん?」
心なしか真面目な面持ちの元揮君が俺の顔を覗き込んだ。
「ん?どうした?」
「……今日の悠さん、いい笑顔でしたよ」
「……?」
またこいつはよくわからない事を言う。
「なに? いつも俺は笑顔じゃん」
「いや、悠さん最近疲れてるのかちゃんと笑えてなかったですよ。俺、悠さんの事よく見てますからわかります。他の人は誤魔化せても俺にはわかりますから……」
「………… 」
元揮君の視線が痛い……
「大人をからかうんじゃないの!」
「なんだよ、大人とか言ってそんなに歳違わないじゃないですか」
「いやいや違うよ……」
口を尖らせて抗議する元揮君にガラガラの店を任せ、俺は事務所へと引っ込んだ。
笑顔ね。
俺、ちゃんと笑えてるはずだよ。
……なんで今更そんな事言うんだよ。
また少しだけ頭痛がしてきたので、俺はソファに座って目を瞑った。
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