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怖い…
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車中、終始ご機嫌な敦が喋り通していて純平君と盛り上がっていた。
俺は早く一人になりたい……
敦から離れたかった。
「ありがとね、純平君。今日は楽しかった。また店に飲みきてね」
マンションに到着し、車から降りると俺は窓越しに話しかける。そんな中、敦も車から降り純平君に声をかけた。
「純平君ありがとね」
……え?
まさかとは思うけど……
「敦?」
敦の方へ視線を向けると、小首を傾げて「コーヒーでもいただくよ」と笑って言ってのけた。せっかく久し振りに会ったんだから少しくらいいいだろ? と言って強引に俺の部屋に来るつもりらしい。そんなの冗談じゃない。
「ねえ、純平君もコーヒーでも飲んでく?」
敦とニ人きりになりたくなくて慌てて純平君に声をかけるも、借りた車を返さなくちゃいけないとかいいながら帰ってしまった。
「………… 」
「なぁ……そんなにはっきりと嫌そうな顔しなくてもいいじゃんか」
純平君の車を見送りながら、さっきまでの態度とは打って変わり敦は真面目な声で俺に言う。
視線は合わせない……合わせられない。
「嫌なんだよ……わからない?」
俺は小さな声で抗議した。
「わかるよ……悠さんは俺の事、怖いんだもんな。俺は誰かさんと違って思った事遠慮なく全部口に出すからね」
俺の方を向き、含み笑いをうかべる敦に俺はカチンときて思わず声を荒らげてしまった。
「なんなんだよ! 今まで俺の前に現れなかったくせに……今更! ……」
ちょうどその時、同じマンションの住人らしき女の人がこちらをソワソワと見ながら、エントランスへと入っていった。
まだ外だった……
人目が気になった俺の事を察したのか、敦はクスっと笑った。
「男同士の痴話喧嘩か? そりゃみっともねえわな」
「……部屋、来んの? 俺は話す事なんかないけど……」
落ち着け……
心臓、落ち着け。ドクドクとうるさい……
なんなんだよ。変なものが込み上げてくるような感情に俺は動揺を隠すのが精一杯だった。
そんな俺をジッと見つめながら近づいてくる敦に頭を優しく撫でられた。
「ううん、俺は帰るから……ゴメンね、ちょっと意地悪した。悠さん元気そうで安心したよ。おやすみ」
急に優しい笑顔を見せた敦は、それだけ言って帰っていった。
「……おやすみ」
俺は一人、部屋に帰る──
なんだかどっと疲れてしまった。そのままの格好で俺はベッドに横になる。
ああ、そういえばジムで倒れた時に敦が助けてくれたって言ってたっけ。
お礼……
言いそびれたな。
あいつ、あのジム通ってたんだ。
知らなかった。
うん、
知らないよ……敦の事なんかどうでもいい。
── わかるよ……悠さんは俺の事、怖いんだもんな。俺は誰かさんと違って思った事遠慮なく全部口に出すからね──
怖い?
……そうだな、怖いんだ俺は。
優しく触れられた感触を思い出すように、頭に手を置く。
そして力強く抱き寄せられたその肩にも。
ふと押し寄せてきた寂しさに首を振り、俺は目を瞑って眠りについた。
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