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陸也と志音……と俺
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「別に純平君とはそんなんじゃないから!……何か勘違いしてない?」
俺はムッとして言うと、入口に立っている敦はクスッと笑った。
「そう? 悠さんあいつに惹かれ始めてんのかな? って思ったからさ。俺の勘違いならいいけど……じゃ、俺そろそろ行くね」
いつの間にか目の前まで来ていた敦は、俺の頭にポンと手を置き、優しい笑顔を向けてから帰って行った。
「なんなんだよ……」
敦が手を置いていた頭頂部に自分も手を添える。
いちいち触んな。
そう思うのに、胸の奥がキュッとした。
敦との最初の出会い──
今からニ年ほど前か、陸也と志音が付き合う直前、敦は俺の店の前で志音とキスをしていた。
きっと志音のことが好きだったんだろう……
でもその時はすでに、志音も陸也もお互いの事を意識していた。
程なくして志音と陸也が付き合い始める。
俺は陸也の事を知っていたからこそ「よかったな」と祝福をした。
陸也も志音も以前と変わらず店に来てくれ、志音に至っては俺に恋愛相談もするようになった。
高校生らしい可愛い恋の悩み──
陸也だって同じだった。
ニ人とも見た目とは裏腹に、お互い初めての真剣な交際。
微笑ましかった。
ニ人ともお互いをとても大事に思い、愛してるのがよくわかる。
羨ましい……
俺は人を愛し、愛された経験がない。
正直、祝福している面をして内心は羨ましい……そんな気持ちが渦巻いていた。
ある時志音に俺と陸也の過去の関係を知られてしまい、問い詰められた。
「悠さんは陸也さんの事好きだったんだろ?」と言われてしまった。
図星を指され、思わず抑えていた感情を爆発させてしまった。
だったらどうなんだ?
だからと言って何かが変わるのか?
少し酒も入っていたせいか、ポロっと零した途端に次から次へ溢れ出してしまった。
どうしようもない事を、志音にぶつけてしまって自己嫌悪……
すぐさまいつものように誤魔化し「意地悪言ってごめんな」と志音に詫びた。
零してしまった感情を、また拾い集めてしまい込む。
感情を隠すのは得意だ。
嘘をついたり隠したり……
自分が人とは違うと気づいてから、今迄ずっとこうやって生きてきたんだ。
でも、陸也と再会してからは不安定。それは自分でもわかってた。
寂しいんだ。
取り残された感じがして孤独感に押し寄せられる。
でも、そんな感情も、月日が経てば薄れていった。
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