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敦
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志音と陸也……
ニ人で飲みに来たり、元々志音も陸也もこの店の常連客だったこともあり仕事の後にそれぞれ一人で飲みに来る事も多かった。
そんな中、突然敦が一人で飲みに来た。
勿論有名人だし志音の事もあったので、俺は初めからすぐに声をかけた。敦は既に他所で飲んでいたのか、愛想良くお喋りを始める。
この店がずっと気になっていたけど、なかなか忙しくて来られなかったらしい。
気になっていたのはきっと、以前志音が店の前で泣きそうになっていたから。
その時だろうな、敦が志音にキスしたのは。店を出た俺と陸也がその光景を目撃して、陸也が敦に声をかけたんだっけ──
「悠さん、彼氏いるんでしょ?」
敦が一人で通い始めてからしばらく経ったある日、カウンターの端に座る敦に唐突にそんな事を言われた。
「彼氏ってなに……そんなのいないですよ」
クスッと笑い、首を振る敦に少しイラついた。
「いや、あの人恋人じゃないの?」
敦の言う「あの人」とは、陸也の事だとすぐに分かった。
敦はこの店に来るのに志音と会わないよう避けていたらしく志音とは鉢合わさなかったけど、かわりに陸也とはニ回程一緒になる事があった。
陸也は敦の事を避け、離れて座っていたから二人が会話する事はなかったけれど……敦は陸也の相手は志音だって事を、この時は知らなかったらしい。
「悠さん、あの人と喋ってる時全然違う顔してるから……大切な人なんでしょ? 隠したってわかるよ」
大切な人……
確かに大切な人には変わりないけど、陸也の恋人は俺じゃない。
「……違います。ただの昔馴染みで仲がいいだけですよ」
「ふぅん、そうなの?」
敦に指摘されるほど、俺は顔や態度に出ているのか?
敦はそれ以上は何も聞かず、また一人静かに飲み始めた。
そんな敦に俺も付き合い、他愛ない会話をしながら少しだけ酒を飲んだ。
「そうそう、悠さん俺より歳上でしょ? 敬語で話すのもういい加減やめてもらえる? なんか距離感じて嫌だな。ね?」
敦にそう言われ、俺がわかったと頷くと嬉しそうに敦ははにかんだ。
最初に見た時から敦はクセのある奴だと感じていて、客とオーナーという壁を作って接していた。でもこの時を境に俺は自分からその壁を消してしまった。
きっとそれがいけなかったんだ──
それからは、敦は仕事終わりに頻繁に店に来るようになった。
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