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わからない
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敦は黙って俺の横に座っている。
「………… 」
なんなんだよ。早くどこか行ってくれ……
「悠さん、気……済んだ? こんな所で一人で泣いてちゃダメだよ。危ないよ」
俺が見てる事に気がついた敦は、俺の方を向く事なく優しい声でそう言った。
「別に……危なくなんかないし」
プイッと敦から顔を背けると、クスッと笑い声が聞こえ敦にいきなり肩を組まれた。
「悠さん、もっと自覚しなよ……自分がモテるのわかってるくせに、こういう所は無防備だよな。俺がいなかったら悠さん危ない人に声かけられちゃってるよ?」
そう言いながら敦は少し離れた所に佇む数人の男達に向かって「ほらあれ」と言って顎を突き出す。
「俺が送ってくから……ほら、立って」
腕をグイっと持ち上げられ、俺はフラつきながら立ち上がった。
「なんか変なのに目つけられてるからさ」
「………… 」
俺は敦の言われるままに歩き出した。
体、密着してる──
敦が俺にぴったり寄り添ってるから歩きにくい。さっき店で敦が俺に言った事、全て否定して文句を言ってやりたかったけど俺は言葉が出なかった。
認めたくないけど、敦の言う通りだった。
ずっと見て見ぬフリをしていた傷口があっという間に開いてしまった。
これ以上、俺に寄り添わないでくれ……
敦の前で、弱い自分を見せたくなかった。
しばらくそのまま歩く。でも俺は敦から離れたくて、しっかりと俺の肩を抱いてる敦の胸をグッと押した。
「……もういい。一人で帰れる」
「………… 」
「敦、もういいから。一人でいたい……離して 」
敦はなぜか黙ったまま、離してくれない。
そのまま路地へと入ると、少し乱暴に壁に体を押し付けられた。
「痛っ…… 」
いきなり顎を掴まれ、強引にキスをされた。
噛みつくようなキスをして、怖い顔で俺を見る敦。
「悠さん見てるとイラつく! 家どこ? 帰るよ! ……別に何もしねえから!」
……はぁ?
なんで敦に怒られなきゃならない? 意味がわからないし「何もしない」って……今俺にキスしたのは誰だ?
「痛いって! 腕、離せ! わかったから……とりあえず手ぇ離して! 家もそっちじゃねえし…… 」
俺の手首を掴んだままずんずんと歩き始めた敦にそう言うと、パッと手を離し俺と並んで歩き出した。
お互い黙ったまま俺のマンションの前までつくと、敦は「じゃぁまたな 」と言って帰って行った。
なんなんだよ……
俺の事揶揄ってんのかな?
傷を抉るような事を言っておきながら、優しい目で俺を見て……
キスまでしたのに最後は怒って帰っていった。
意味がわからない。
「またな」なんて言ってたくせに。
それっきり敦は店に顔を出さなくなった──
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