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苦手
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正直言って敦が来なくなってホッとしていた。
あの事があったおかげで、俺はまた陸也の事を意識してしまう……でも別に陸也とどうこうなりたいってわけじゃなくて、ちょっとドキドキしてしまう自分に戸惑っていただけ。
なんでもない……
こんなのどうって事はない。
それでもやっぱり志音と二人で幸せそうな姿を見てると「よかったな……」と思えるようにはなっていた。
元揮君が俺に対して世話焼きっぽくなってきたのもこの頃からかもな。
敦との出会いを思い返す──
なんでまた急に俺の前に現れたんだ……ていうか、あれは偶然か。
俺は敦が嫌いなんだ。
なんで敦に純平君の事をとやかく言われなきゃならないんだよ。
「──やめときな」って何なんだよ。
純平君は別にただのお客さんだし、否……友達だし。
敦の事が嫌いだし苦手だからこんなに胸がドキドキするんだ。
いきなりまたひょっこり現れやがって。敦の考えてる事がわからずに、胸が騒つく。
俺はモヤモヤとした気持ちを切り替える事が出来ないまま、店へと向かった。
店に入ると、準備中の元揮君が顔を上げる。
「あ、悠さん今日は早いですね」
「………… 」
俺の顔を見るなり何か言いたそうな顔をする。でもそれ以上は何も言わず店の準備を続けた。
開店してすぐ、一人目の客が入ってくる。
「あ…… 」
そこにいたのは敦だった。
横で敦の顔を見た元揮君が小さな声で「あぁ、原因はこれか…… 」と呟く。
「悠さん、疲れてそうだから奥で休んでていいですよ」
元揮君は敦の顔を見るなり俺にそう耳打ちをした。気を遣われて面白くなかったけど、今日はお言葉に甘えさえてもらい俺は事務所に向かった。
敦と何を話したらいいのかわからなかった。
もう乱されたくない……というのが本音だった。
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