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動揺
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元揮君に言われて事務所に下がってきたものの、まるで俺が敦から逃げてるようなのも癪に触る。元揮君一人に店を任せているのも申し訳なく思い、俺は気持ちを切り替えて、すぐに店の方へ戻った。
店内を見ると、まだ他の客はいない。客はカウンターにいる敦と純平君だけだった。
「いらっしゃいませ。純平君昨日はありがとうね。楽しかった」
……なんで敦と純平君が仲良く飲んでるんだよ。
「悠さん、大丈夫ですか? 疲れちゃいました?」
きっと元揮君から何か聞いたのだろう。純平君が心配そうに俺の顔を覗いた。
「ううん、ごめんね。大丈夫……」
チラッと敦を見ると、何か言いたそうな顔をしている。そんな態度に俺は動揺する気持ちをそっと隠す。
「よかった。俺が無理言って気を遣わせちゃったかなって心配でした」
「そんなことないよ、デート楽しかったし。また誘ってね」
頬杖をついて俺の顔をジッと見る敦……
「悠さん昨日は純平君と一日デートしてたんだぁ。いいなぁ、俺ともデートしろよ」
揶揄うようにそう言った敦に向かって、少し慌てた感じで純平君が否定した。
「敦さんまで! あれはデートじゃないです、俺が悠さんにお願いして出かけるのに付き合ってもらっただけなんですって」
「だからそれがデートなんじゃねぇの? 純平君、悠さんのこと独り占めしたかったんだろ?」
「………… 」
「敦! 純平君、困ってんだろ。さっきからなんなんだよ。嫌な言い方しやがって 」
聞いていられなくなり思わず食ってかかると、ヘラッと笑う敦にやんわりとあしらわれてしまう。
「悠さんも珍しいよね? あんまり人と二人でなんて出かけることしない人なのに。なんか妬けちゃうな……」
さっきまで人を揶揄うような事を言っていたのに、今度は真面目な顔をして俺の事を見つめてくる敦にドキッとしてしまった。
「……はぁ? わけわかんないし」
敦がなにを考えてるのかわからず、なぜだか胸がモヤモヤと掻き回される感じが堪らなく嫌だと感じる。
「純平君もさ、悠さんと同じジム行ったりデートに誘ったり、もしかして悠さんの事狙ってんの?」
ありえない! 純平君になんてこと聞いてんだよ! そう思って慌てて俺は敦を見た。
「え? 敦さん、狙ってるって? 俺、男っすよ?」
ほら、純平君困惑してる。ノンケなんだからそもそもそういう概念がないんだよ。これ以上おかしな事を純平君の前で言うのはやめてくれ。
「ははっ……そうだよな。純平君ごめんな……あ、悠さん俺そろそろ行くね。ごちそうさま」
「………… 」
人の事を引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、敦はさっさと店を出て行った。 閉まるドアを見つめ、ドッと疲れが湧き上がるのを感じる。
「敦さんって面白いですよね。ちょっと怖いなって思う事もあるけど……」
純平君がクスッと笑った。
「それにしても、悠さんって敦さんの前だと感情的になるんですね。なんだか新鮮……」
「そんな事ないでしょ? いつもと一緒だよ」
なんで俺、動揺してんだろ。ほんと調子狂うな……
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