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カミングアウト
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違う──
鵜呑みにしちゃダメだ。
純平君は優しいから、きっと一年前に俺が泣いているのを見てずっと気にしていたから……忘れた頃に偶然再会して、仲良くなって、だからきっと特別に思えてしまってるんだ。
「……悠さん、ごめんなさい。俺、男なのに……変な事言っててるのは分かってます。でも!」
「待って…… わかったから!」
怪訝な顔で通り過ぎる同じマンションの住人に気がつき、俺は純平君の手を引っ張り部屋の中へ招き入れた。
「とりあえず、コーヒーでいいかな」
リビングのソファにちょこんと座っている純平君に、俺は聞く。
……ちょっと無愛想になってしまった。
「……はい」
ローテーブルにコーヒを置き、俺はその場で立ったまま純平君に話した。
「純平君? 俺はこれっぽっちも気持ち悪いなんて思わないよ……」
ぱっと顔をあげて俺のことを見る。
「……でもね、さっきも言ったけど純平君の勘違いだよ。気のせい。そもそも好きってどういう好きなの? 友達として……だよね?」
「………… 」
俺が突っ込んで聞いてみたら、やっぱり。
……黙っちゃってんの。
本人にもわかっていないんだ。
「俺ね……純平君友達だから言っておくけどさ、ゲイなんだ。だからさ、あんまり軽率なこと言わない方がいいよ。俺勘違いしちゃうから……」
はっきり言えたらちょっとだけスッキリした。
牽制……ここまで言えば純平君だって少しは冷静になれるだろう。
純平君はぽかんとして俺を見ている。
俺がゲイだなんてこれっぽっちも思ってなかったのかな?
「え……えっと、悠さんは……」
「そう、俺は恋愛対象は男だよ。だからさ、やめてよそういうの……結構しんどいからさ」
「………… 」
少しずつ純平君に惹かれているのは認める。
好意を持たれて優しくされて、嬉しく思っている自分もいる……
でも違うんだ。
純平君は俺とは違う……
(悠さん……純平君はダメだよ。やめときな)
敦の顔が頭に浮かぶ。
なんだよ。
なんで敦の顔が浮かぶんだ……
「……悠さんは、好きな人、いるんですか?」
唐突に純平君にそんな事を聞かれ、動揺してしまう。
「今……は、いないよ。もういない」
想い焦がれる気持ちは奥へとしまい込む。
そのうちに、その気持ちは小さくなって俺の一部になっていた。
「なら、俺がどういう気持ちで悠さんと一緒にいたって別に迷惑じゃないですよね?」
「………… 」
妙に生き生きした顔で俺に近付く純平君に戸惑ってしまう。なんで急に元気になってるんだ?
「俺もっと悠さんと仲良くなりたいから……これからも変わらず付き合ってください」
純平君は、告白なんだかそうじゃないんだかよくわからない告白をして、笑顔でコーヒーを飲み干してから一人すっきりした顔をして帰って行った。
『きっと好きなんだ……』
そう言った純平君……
でもきっと純平君にもわかってないんだろう。
純平君は今まで女としか付き合った事がないんだろうから。
俺の事を恋愛対象として見ちゃダメなんだ──
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