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嫉妬心
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「え……? 今なんて?」
俺の聞き間違いかな?
敦は今、赤い顔をして俺の事を「愛おしく思う」と言わなかったか? それはどう言う意味かと問い詰めたくなった。
「敦……?」
俺から目を逸らしたままの敦が、クスッと笑って握っていた手を離した。
「忘れてた。明日も仕事早いんだった……悠さんご馳走様」
席を立つ敦が、ポケットから財布を取り出す。
その顔は笑顔だけど、なんだか寂しそうな顔にも見え、俺は複雑な気持ちになった。
「敦……もう帰るのか?」
……何を聞いてるんだ俺は。
思わず出てしまった言葉に自分でも少し驚く。
キョトンとした顔で俺を振り返る敦が小首を傾げた。だって久し振りに店にきてくれたんだ。もう少しいてくれてもいいだろうに……
「あ……明日早いんだったな」
慌てて取って付けたようなことを言う俺にまた敦はクスクスと笑った。
「俺が帰るの、そんなに寂しい?」
「……なわけあるか」
……やっぱり調子狂うな。
「悠さんさ、今度サシで飲もうよ。俺、なんとか時間作るからさ」
敦はそう言って「また今度」と店を出て行った。
扉の向こうに消えてく敦の後ろ姿をぼんやりと見つめていると視線を感じた。振り返ってみるとそこには純平君が立っている。
「敦さん、来てたんですね……何話してたんですか?」
少しだけ不機嫌そうな顔をして純平君が俺に聞く。
何でそんな顔するの?
俺が誰と何を話そうが勝手じゃないか。
「ん? 別にいつもの調子でお喋りしただけだよ」
……いつもの笑顔で話せただろうか?
いや、ダメだな。
きっと俺は今、嫉妬で嫌な顔をしてる。
「あれ? お友達はどうしたの?」
見ると純平君ひとりみたいだった。
「あ、もう帰るんで……俺は里佳を送って行きます。あ……あの、悠さんはまだいますよね? あ、もしかしてそろそろ帰っちゃいますか?」
純平君は彼女を送った後、またここに戻るから話したい、と言っているようで切なくなった。
「今日はちょっと体調悪いし、元揮君に任せてもう帰るから……」
嫌な気持ちでいつも通りに振る舞えないのがわかっていたから、俺は思わずそう言って純平君から逃げてしまった。
(悠さん? 大丈夫だよ……何でも心に閉じ込めないでちゃんと相手にぶつけろよ。言わなきゃわからない事だってあるんだ。それくらいわかるだろ?)
敦の言葉が頭を過ぎった──
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