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好きなのに
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お酒も進み、悠さんが珍しく頬を染めて陽気に喋っている。
「ねえ……悠さん酔ってます? 大丈夫?」
今までこんな風になってる悠さんを見たことがなかったから、少し戸惑う。
「大丈夫だよ。純平君こそ、あんまり飲まないんだね」
床に直接座っていた悠さんが立ち上がり、ソファに座る俺の隣に腰掛けた。
「俺は元々あんまり飲めないんですって……知ってるでしょ?」
「うん、 しってる〜」
楽しそうに笑い、悠さんはおもむろに俺の肩に頭をポンと乗せてくるからちょっとドキッとする。
「本当、悠さん今日はどうしちゃったんですか? ご機嫌ですね」
こんなに上機嫌で俺のことを部屋に呼んでくれた事がなんだか嬉しくてそう聞いたのに、思いがけない言葉が返ってきて俺の胸はキュッとなった。
「敦のおかげでさ……俺は少しだけど前に進む事ができたんだ。ずっとここにモヤモヤと燻ってた事を相手にやっと伝える事ができたんだ……」
悠さんは嬉しそうに自分の両手を見つめながら、俺にもたれたままでそう言った。
「長〜い長〜い片想いの塊がね、やっとスコンとここから落っこちていったんだよ。ふふ…… 」
トントンと自分の胸を叩いてる。
悠さん、可愛いな。
でもなんでここで敦さんの名前が出てくるんだよ。俺は敦という名前を聞いて面白くないと思ってしまった。これはやきもち以外の何物でもない。
「なんで敦さん? 何? 片想いって……俺がいるのに敦さんの名前出さないでくださいよ」
思わずムッとしてそう言ってしまったら悠さんの顔色が変わった。
「……なにそれ。もしかして嫉妬?」
あ……
悠さん怒ってる。
「焼きもち……です。すみません」
悠さんから目をそらし、俺は余計な事を言ったと心の中で後悔した。
「なんで? なんで純平君が焼きもち妬くの?……なんでそんな気まずい顔しちゃってんの?」
俺の顔を覗き込むようにして悠さんが冷たく言う。
「なんで? って! ……そんなの好きだからに決まってんじゃん」
ちょっと腹が立って強い口調になってしまった。でも俺は悠さんが好きなんだ。告白だってしたんだ。悠さんに「好き」だと伝えたんだ。
「……好き? 純平君それは違うよ」
「違くない! なんで? なんでそんな事言うんですか? 俺は悠さんが好きですよ!」
「………… 」
悠さんは黙ってテーブルにあるワインを一気に飲み干す。
「純平君の言う‘好き’と、俺の好きは違うんだよ。俺は……俺は、純平君の事が好きだからよくわかる」
俺に寄り添っていた悠さんが、少しだけ離れた。
「……何で? 意味わかんねえよ」
何度も好きだって言ってんのに、わかってもらえなくて苛々した。
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