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気持ちの変化
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「久しぶり〜! 悠さん元気してた?」
元気よく敦がカウンターのいつもの席に腰掛ける。
「………… 」
久々に見た敦の姿。
少しだけ小麦色に焼けた肌が、更に健康的に敦の魅力を引き立てていた。
「ほんと、敦は神出鬼没だな……久しぶりだね。仕事忙しかったの?」
「うん……忙しかったっていうか、日本に居なかったんだよ。悠さん、俺いなくて寂しかった?」
小首を傾げて俺に向かってニコッと笑い、冗談を言う敦に俺は微笑み返して「うん」と頷く。
「は?……何その返事? やめて、 ここは “そんなことねーよ” って鼻で笑うところじゃねえの? 」
急に慌ててそんなことを言って恥ずかしがる敦に、俺は思わず声をあげて笑ってしまった。
……それこそ敦らしくない。
「なんだよ、そんなに恥ずかしがっちゃって。敦君は実は照れ屋さんなのかな?」
更に追い討ちをかけて揶揄うと、本当に赤くなって黙ってしまった。
でもその通りで、正直敦が来ないと寂しく思う。以前ならきっとせいせいしてたはずなのに……
敦の事、最初は印象も悪かったし、俺の神経を逆撫でするような事ばかりだったから、寧ろ苦手で嫌いだった。
いつからだろう……
俺が敦に抱く感情に、悪い印象が無くなったのは。
今思うと、俺が頑なになっていた部分を敦が解してくれていたんだとわかる。
敦が俺の溜め込んでいたところに小さな穴を開けてくれた。
そこから涙となった感情が驚くほど零れ落ちた。
敦が突いてくれたから……
見て見ぬ振りをせずにいてくれたから……俺は陸也と話をすることができたんだ。
純平君とも。
「……敦」
「ん?」
「ありがとうな」
初めは印象悪かったけど、やっぱり今は感謝しかない。おまけによく話すようになってからは、敦の性格も少しわかってきた。
何故だか俺が素直に発言すると照れるらしい。案の定、お礼を言った途端に慌てて俺から目線を逸らす。
「なに? 今度は何のありがとうなの? やめろよ、もうこないだちゃんとお礼言われたよ?……違うの?」
「ふふ……敦、慌てすぎ。ほんとお前こういうの苦手なんだな。そうだよ、こないだのことな。あれからちゃんと話できたんだ。俺……吹っ切れたよ。敦のお陰だ。今はすっごい清々しい。だからありがとう」
生意気で自信家な敦が、照れたり慌てたりするのを見るのも楽しくて、俺は何度も敦に感謝の言葉を続けた。
「もう!ありがとうはいいからさ。やめてよ。でもよかったな。悠さんいい顔してる……それでどうなの? 奴と話したって…… つ、付き合うの?」
敦が急に神妙な面持ちで俺に聞く。
「ん……フラれたよ」
俺がそう言うと、驚いた顔をして俺を見た。
「は? フラれた? ……フったの間違いじゃねえの?」
「いいんだ、フラれたの俺は。純平君には里佳さんがいる。少しでも彼女とやり直す可能性があるならそっちの方がいいんだよ」
「………… 」
なんだか腑に落ちない顔をしてるけど、敦なら多分わかってくれる。
「そうなんだ。悠さんが納得してるんなら、まあいいんじゃね?……はい、乾杯」
敦は俺に向かってグラスを傾ける。
俺はそれに答えてカチンとグラスを重ねた。
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