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ケジメ
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どうしたのか純平君が大人しくなってしまった。
車に乗り込んでから、なんだかずっと上の空……
俺が美術館にあまり興味示さなかったから嫌だったかな?
少し不安になり、運転している純平君をチラッと盗み見た。見てみたところで何を考えてるのかわからなかった。
「悠さん、戻ったらちょっと買い物付き合ってもらえますか? その後一緒に夕飯食いましょう。もちろん奢りますから」
だいぶ地元に戻ってきたところで純平君が唐突にそう言った。
そりゃ勿論構わないけど……
「別に奢りじゃなくていいよ。今日は凄く楽しかったし。美術館も入場料払ってもらっちゃったしさ、俺からのお礼なの筈なのになんか悪いよ。まるっきり立場逆になってるし。ね? せめて晩飯は割り勘にしようよ」
少しだけ俺の意見に渋ってたけど了承してくれた。それでも行き先は純平君に任せることにした。
純平君は元々そんなに飲めないらしいから、飲まなくてもいいんだと言う。
「ちゃんと送りますから、今日は好きなだけ飲んでくださいね」
「ありがとう」
車だし飲むつもりはなかったとはいえ、俺をちゃんと送ってくれようとしてくれるのは嬉しく思った。
駐車場に車を停め、近くの雑貨店に入る。
買い物って、何を買うのだろう。フラフラと店内を見ていると、純平君が棚からサッとマグカップをひとつ持ってレジへ並んだ。
そんな純平君の後ろから覗き込み「マグカップ? 随分と決めるの早かったね」と聞くと、少し困ったような笑顔を浮かべた。
「あ……うちで使ってるカップ、彼女とお揃いのだったんですけどもう別れたし。いつまでも持ってんのなんだか嫌になってきて。だから新しいのなら何でもよかったんです」
言いにくそうにそう言った純平君の顔を見て、俺は少し胸が傷んだ気がした。
なんで俺、少しがっかりしてんだろう……ノンケの純平君に彼女がいたってなんらおかしな事じゃない。
「彼女と別れたのって最近?」
スッと出てしまった自分の言葉に戸惑いを覚える。なんでこんなこと聞いてるんだろう?
「いや、もう一年以上も前の事ですよ……なんか気にせず使ってたんだけど、ふとね、ケジメつけなきゃなって思ったもんで」
思ったらすぐに行動したくなっちゃうのが悪い癖だと言って笑う。そうだよ、何も今日の今、買いに行かなくてもよかったんじゃないか? なんて思ったりしたけど黙っていた。
それに純平君のいう「ケジメ」っていうのも少しわかる気がするから。
「すみません付き合ってもらっちゃって。買い物済んだからご飯行きましょ」
雑貨店から少し歩いたところにある、ちょっと小ぢんまりした居酒屋に入った。
「俺、ここよく来るんですよ。とにかく料理が美味くて……」
ご機嫌でカウンターに座る純平君の隣に俺は座った。
カウンターの目の前に、たくさんの惣菜が並んでいる。どれも家庭的で美味しそうだった。
とりあえずのビールを頼み、烏龍茶の純平君と乾杯をする。
「どうせなら、一緒に飲みたかったな」
そう俺が言うと「車じゃない時に、またニ人で飲みましょう」と、はにかみながらそう言った、
またニ人で……ね。
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