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頭脳戦略
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それから約50分間、泰華と数学の授業が続き、やっと休み時間が来たと思ったら校長先生がいきなり保健室に乱入してきた。
校長先生だけではない。後ろから教頭、事務員、現国のせんせーに英語のせんせー、歴史、科学、物理、体育と色んな教科を受け持つ教師達がぞろぞろと保健室に入ってきた。
一体何が何だかわからず柏木と泰華の方を見たら二人とも「おやまあ」と声を漏らすだけで大して驚く様子もない。決して広くない保健室に総勢25名程の教師達とただ一人生徒の俺が慌てているのをよそに、額と頬に大きな絆創膏を貼った校長は腕を組んだまま重々しく口を開いた。
「話し合いはまとまった」
その言葉に教師一同が一斉に頷く。いやいや、何の話し合いだよ。この空気は何のコメディドラマだよ。凄く嫌な予感しかしないんだが。
すると柏木が徐に立ち上がって、一旦奥の部屋へ消えた。ガラガラとキャスターを引く音と共にホワイトボードを引っ張ってこちらの部屋に出してくる。
「どうぞ、これお使いになってくださぁい」
いやいやいや、嘘だろ。まさか、泰華の言った事が本当に実行される訳じゃねェだろうな…。
専用のマジックをとって、きゅぽんと蓋を開けた校長はキュッキュと音を鳴らしてホワイトボードに文字を書き込んでいく。
「名付けて…」
▼御法泉麓、校内統一作戦
いつの戦国時代だ?と突っ込みたくなる気持ちは山々だが、かの有名な織田信長公は荒れる日本を力を持って制しようとした。実際、統一できたのは豊臣秀吉だったがな。鳴かぬなら殺してしまえホトトギス。その鬼の様な性格を表したのがこの歌。
昨日、あれから教師陣総出で説得され作戦を説明されキャラ作りを申請され…校内の主要人物の顔と名前を全力で叩きこまれた御法泉麓は歴史科の教師、前田に「お前は『信長公』になるのだ」とカッコよく宣言されたのでした。
説明された事を思い出しながらいつも通りグラウンドに沿って下駄箱に続く道を歩く。本校舎を見上げたら窓から数人の生徒と目が合った。やっぱ目、付けられ始めてるんだな。厄介だ…。
教師達の迫力に負けて二言返事ではいはいと言ってしまったのが悪かった。どうにかしてくれ、と柏木に訴えたら「御法が傷だらけになっても優しく介抱してあげるやん?」と半笑いで返された。それはある意味俺にとって裏切られたような感覚にも近かった。次あったらアイツの首根っこキュッと締めてやろう。
…けれど、教師達の気持がわからない程俺は馬鹿じゃない。
さんざん反抗期の生徒たちに痛めつけられてこんな馬鹿馬鹿しい目に合ってこれだけ長い時間堪えてきたんだ。
鬱憤もたまるし、本来の職務も果たせないんだから機会があればどうにかしたいに決まってる。今まで懲らしめようと立ち上がった大人達は何人も病院送りにされた。
柏木の目だってそうだ。先生達にとって俺が頼みの綱だというのなら…知能ゼロな俺に藁にもすがるつもりで意を決して集まったんなら…だったら…義理でもできるだけ応えてやるのが人情ってモンだろ。
確かに面倒事は嫌だし、痛い目に合うのも嫌だ。けど人が喜ぶところを見るのはスキだ。なんだかんだいって先生達の事もスキだから。いつまで続くのかわかんねぇけど、頑張れるだけやってみるか。俺にできることなら。何か少しでも状況が変わるなら。
気を引き締めて本校舎の下駄箱へと入る。薄暗い場所で、ガラスの破片が飛び散って至るところ埃まみれだ。ある意味ホラーハウスに近い不気味さ。
土足のまま階段へと歩いたら、廊下にいた何人かの不良に睨まれた。しかし声はかけられない。俺は気にすることなく二階へ向かった。その階は一部を覗いてダンディー領だ。
残りの一部分はマックスに与えられている。だが人気が無い。まったくおかしな話だって。
この階には俺以外誰一人居ないらしい。ま、朝早ぇーし当たり前と言ったら当たり前か。不良は基本的に朝にすこぶる弱いからな…。
さてと、作戦A、実行しますか。
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