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団体行動
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組織をまとめるリーダーが居ないと、構造が単純で脆いものになる。集団にはやはり統括する者が必要とされ、統べる者が現れるということが歴史的社会の始まりだそうだ。
最早これは常識になっていて現代の社会でも当たり前のように根付いている。しかし今のマックスにはそれがない。という事は言うなればただの団体行動。
要するに喧嘩しか能がない連中が群れているだけ…だから制し易い、泰華はそんな感じで説明してくれたっけか。もっと難しい事も言ってた気がするけどよく覚えてねぇや…。
ま、そんなこんなでマックス紅龍のメンバーをちょいちょいと挑発したら…まるで蜂の巣をつついたようにわーっと仲間が大襲撃にやってきた。
俺が今いる場所は二階の丁度一番端にある展開教室。普通の教室よりも少し大きく、その名の通り机ひとつ置いてないガランとした部屋で、そこにマックスのメンバーがぞろぞろと面白いくらいに来るわ来るわ。なんて単純なやつらだ。
俺はさり気なく教室の隅の壁に凭れ怪しまれないように挙げた手で髪を掻く仕草をする。そしてチラリと左へ視線を向けたら窓の外、中庭に現国の先生がいた。ほんの一瞬目を合わせたら、先生はその場を走り去って行った。
笑みを携えて目線を戻すと眼前へズラリと並んだメンバーを一瞥する。ぎゅうぎゅう詰めになった騒がしい教室内へ声をかけてみた。
「これで全員かァ?」
質問に答えたのは真っ青な短髪をしたチャラい男だった。もしかしなくてもコイツは青龍チームに所属してるとかそんなんでしょうかね。面白いくらい全身真っ青だな、おい。
「お望み通り、校内にいるマックス全員連れてきてやったぞコラァ」
「ほぉ…」
「テメェの条件は聞いた…テメェを倒したら俺等の仲間に入るんだなァ?今更、全員でかかってくんのが卑怯だとかいう言い訳はきかねーぞ」
「誰が言うかよ。…あ、それともう一つ条件追加で」
「アァん?」
壁から体を起こすと丁度青髪の男の前に立って見下ろしてやる。
「俺が勝ったら、俺がマックスの総長にならせてもらう」
「…何?!」
ざわざわと騒がしかった室内が一瞬にして静まりかえる。と思ったらさっきよりもデカい喧騒が耳を貫き始める。聞こえるのはあからさまなブーイングと愚痴。ったく口々に煩ェ野郎共だな。チッと舌打ちをした青髪の横から金髪の不良が割って入ってきた。
「総長を作らねェ…それがマックスの歴史なんだよッ…てめェなんぞに」
「あっそう。だったらこの話は無かった事にしていいんだぜ?別にテメェらと同じ組に入らんでも、他がいるし、な」
語尾を強調して言ってやれば見事、青髪と金髪は悔しそうに押し黙る。そんな彼らに更に追い打ちを掛けてやった。
「負けるのが怖ェかァ?俺を潰す自信がねェようだなァ…?」
俺の煽りに目の前の二人は同時に顔を上げた。だからなんでこんなに単純なんだこいつら。
「ほざけよ…?ハンッ、俺等が負けるはずねーだろうがァァ上等だ、テメェ潰して二度と総長なんざ言わせねぇようにしてやるッ」
「当たり前だァ!マックス最強ォォ」
と、金髪が後ろに振り返って仲間に声を掛ければ「ウォォォ」という雄たけび。一致団結しやがった。傍から見りゃ上下関係の無い仲間達と心を一つにして敵に立ち向かうという青春映画みたいにとられるが、忘れちゃいけねェ…この場にいる敵はあくまで俺「一人」だという事を。一人にビビって言われた通り仲間を引き連れて集団リンチの為に一体感を得る。
うーん格好悪い。
本当に申し訳ないが、俺は正々堂々と戦うつもりは端っからない。だよな、先生…。
「こんな狭い場所じゃなくて、校庭にでも出よう…」
ぜと、青髪が言いかけた時だった。突然、部屋の後ろ、密集した不良共の背後の窓から物体が飛び込んで来た。「何だこれ!」「何か入ってきたぞ!」と叫び声ともならぬ悲鳴が聞こえる。
どうやら始まったらしい。俺は窓から投げ込まれたものが何なのか見なくても分かる。次々に袋に包まれた「何か」が教室に投石のように雪崩れ込む。状況が分からないままマックス達はおろおろと慌て出した。
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