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清掃活動
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「おー、やってくれたなぁ」
「せ…先生…」
教師達が集まっているグラウンドへ出たら、泰華と柏木が真っ先に俺の方へ駆けつけてくれた。マックスのメンバーが落ちた一階の周りには今は忙しなく救急隊員が怪我人を運び出している。隊員曰く入院するような重症患者はおらず、軽傷者のみで驚くほどピンピンしてるらしい。さすが、喧嘩最強チームの不良ってとこか?
「つーか、聞いてないっすよ、床があんなに抜けて全員落下とか…」
「あー、ッハハハ、あれは俺達も計算外だったー」
元々この作戦は、老朽化や傷みが著しく一番危ないとされていた二階の展開教室へチームをまるごと呼び寄せて袋叩きにするはずだった。
あの大人数の重みで室内の床に衝撃を与え尚且つ先生達が窓から投げたドライアイスで急激に冷やして温度差で木材に追い打ちをかける。そしてメンバーを一か所へ集めれば体重で圧力がかかり耐久性の無くなった床が抜ける、という寸法。しかし予想よりはるかに大きく穴があいてしまったわけだが…。
「まー、あのマックスも懲りたやろうねェ…今まで悪さしてた分、一気に罰が当たったってコトで」
「おかげでお前はマックスの総長、職員室は元通り。一つのグループが大人しくなったんだ一石三鳥ってトコか?」
「…はあ、」
「よくやったよ」
そう言って柏木が手を伸ばして俺の頭をぽんぽんと撫でた。なんかどっと疲れたけど作戦を立てて僅か二日で一つ目のチームを制圧成功。この調子でいけば校内統一もそう遠くねぇかも。他の先生達も嬉しそうだし、この二人も褒めてくれた。
「でへへへ」と柄にも無い声を出して笑い柏木の手を適当に払いのける。元職員室でみた血痕を思い出して俺は再び誓った。後悔はもうしてない。
「そういや、御法は怪我してへんか~?ほら…俺達は我を忘れてドライアイス全力投球してもうたから…」
「今までの恨みつらみがなァッハハハ」
「あ、いや大丈夫だけど…」
心配そうに見上げてきた柏木の横で泰華が軽快に笑ってる。ある意味先生らもおっかねえな。…大人を本気にさせたら碌なことやりかねない…と学び直した俺でした。
で、その翌日。教師陣は床抜けの事故処理と今後の他チームの出方を見ながらの新しい作戦の練り直し、授業と通常業務に追われていてる。
俺は泰華に「新しい部下共をこき使ってやれ」と背中を押されたので嫌々マックスのアジトに顔を出してみたら生き残ったメンバー達が整列して「うっス、御法さん!おはようございますッ」と快く(?)出迎えてくれたので他にやる事もねぇし、元職員室の清掃をさせることにした。
不良達が壁の落書きを消したり、ゴミを捨てたりする様子はもう彼らの親が見たら感動して涙モノなんじゃねーかっていうぐらい似合わねえ。俺は時折指示しながら唯一見つけ出した箒で廊下に落ちたガラスの破片を掃く事にした。
すると後ろから「総長ー」と緩い声がかかる。何だと振り返れば赤茶色のショートカットの襟足に赤いエクステを付けたマックスの後輩がゴミの詰まった袋を片手に立っていた。ええっと…たしかコイツは一年の…。
「あー、嬉野…だったか?」
「そうっス!ゴミってどこに捨てに行けばいいんっすかねー」
「あー、そこ置いとけ。後でまとめて捨てるから」
「うっすー。にしても意外ッスねー新しい総長が綺麗好きだったなんて」
俺より10センチぐらい低い嬉野はむにゅっとアヒルの様に唇を尖らせると廊下の壁に凭れてサボりを決め込み始めた。コイツは昨日たまたま学校を休んでて床の落下事件に巻き込まれなかったらしい。
嬉野は割と腕っ節が強いみたいで一年のマックスメンバーを程良くまとめてくれるし、そんなに喧嘩っ早い奴じゃない。
俺に対しても攻撃的じゃないし、いきなり総長ができたのにも関わらずすんなりと受け入れてくれてる。他のメンバーも嬉野を見習ってくれたらいいのに。
「綺麗好きっつーか…アジトが汚たなかったらお前ら嫌じゃねーの?」
手に持っていた箒でこれ見よがしに廊下を掃いたら辺りにぼわっと埃が舞う。もう何年も掃除してねぇ証拠だ。
「ンーあんま考えた事なかったっス。2階とかあんま来なかったし…」
じゃあ何のために職員室奪ったんだよと内心毒づいて嬉野の隣に凭れる。みちがえるほど綺麗になった職員室の掃除もあともう少しで終わってしまいそうだ。
最初は清掃に渋ってたメンバー達もいざとりかかれば中々楽しそうに働く。やっぱ綺麗にするという行動は人間の道徳にそった作業なので気持ちが良いだろうよ。
もしかしたらこのままコイツ等の心まで浄化できちまうんじゃねーか。
掃除が終われば次は何させようか…今まで体力を持て余し喧嘩をしてはダラダラ過ごしてきたんだから。男手をフルに使わなきゃ損だろ。いっそ校内の清掃全部任せてみるか…。
「どうすっかなー…この人数じゃなあ…」
ぼそりと呟いたら嬉野が頭の後ろで手を組んで笑った。
「この人数って、総長が床ぶち抜いたから全員落ちちゃったんでしょー」
「…まさかあんなに抜けるとは思わなかったんだよ…」
この校内の生徒数は約800人。3チームの人数分けはマックスが200人ファービーが500人ダンディーが100人ぐらいだ。実際、学校に来てない奴や女子を抜けば人数はその半分くらいになる。そしてマックスは俺が床下へ落っことしたせいで、元気に動ける奴は40人ほど。
いくら喧嘩が強いからといって40人じゃファービーやダンディーを襲いに行くのはまずい。
先生達も一番警戒しなくちゃいけないのはファービーだと言っていた。それに攻略法がまだ出来ていない為に下手に動くのは自殺行為に等しい。
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