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休戦協定
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「秋ノ宮」
「はいはい、準備はできてるよ」
宮古が誰かの名前を呼んだ。すると横から返事がしてそっちを見たら部屋の端にヅラでも被ってんのか?っていうぐらい目に毒々しい水色の髪をした男と、その傍らに俺と同じくらいかそれ以上のガタイのいい男が4人立っていた。
話に夢中でいつ入ってきたのか全く気がつかなかった。水色の男がゆっくりとこっちに近づいてくると、さっき宮古がしたようにじろじろと俺を見回してから「この子が例の狼?」と確認をとった。秋ノ宮という名前とこの髪色を見て記憶の中を探りながら確信する。こいつはダンディライトの総長だ。意外な人物の登場に動揺しちまう。
身長は嬉野よりも小さくて体つきも細い。顔は中性的で肌は真っ白、童顔で年下に見えるが実際俺よりも一つ上だ。
つーか、ファービーとダンディーは敵対してるんじゃなかったか?
(何で…ここに…)
俺の顔に出た疑問を読み取った宮古はご丁寧に説明してくれた。
「ファイアービートとダンディライトはお前が起こした騒動のおかげで休戦協定を結んだ。同盟を組んだと言ってもいい」
「戦闘力の低いダンディーはファービーに守ってもらう代わりに裏から手を回すことを協力しているんだ。情報提供、とか、ね」
宮古に柔らかい口調で付けたした秋ノ宮は薄く気品のある表情で笑った。流石、噂に聞く金持ちとやらだ。
しかし、両者が手を組んだという事は初耳だ。道理で情報が漏れるのが早いわけで、こんなにもすぐに対策を練って来るとはよっぽどシマを荒らされるのが嫌らしい。
この最強ともいえるタッグを前にさっきまでの威勢はどこへやら、一気に湧いた焦りが脚を竦ませた。やべえ、早く先生に知らせねぇと…。
慌てて七山から脱しようと力一杯暴れたが今度は宮古とダブルで押さえつけられて動けない。そんな俺達の前で己の髪の色よりも涼しそうな顔して秋ノ宮はサラリと言ってのける。
「強情な君にはこれから可哀想な目にあってもらうよ…」
言うなり後ろで待機していたガタイのいい4人の男を顎でしゃくる。中の一人はビデオカメラを持っていた。こんな状況を見せられて自分の危機が分からないはずがない。
「ハッ…集団リンチでもする気か?」
「まさか、暴力をして脅した所で君には通用しないだろ?…言葉で言うなら強姦、だね」
強、姦…?聞きなれないその単語の意味を理解するなり心臓が止まる。状況についていけなくて段々と生々しい恐怖が足元から全身を這う。俺は女じゃないが、女の様に扱われるって事か。
「…は?」
固まった俺に秋ノ宮はわざとらしく肩を竦める。
「こうでもしないと君は大人しくならないだろう?もちろん君がファービーに入るならレイプはしないさ。後でやっぱり嘘でしたーって言うのは無しだよ?」
「なに…?テメェら頭おかしいんじゃねぇか…ッ」
タチが悪いにも程があるだろッ。悔しくても抵抗できなくてただ体が揺れるだけだ。自分の身を守るために俺はファービーに入るべきなのか。さっき宣言したばっかなのにもうこれかよ。
頭で問答している間に油断していた脚を払われて呆気なく床に膝がつき、そのまま2人に体重を掛けられると地面にうつ伏せになった。顎に埃っぽいカーペットが当たる。秋ノ宮はここから少し離れて壁際にあった椅子に座ると「やっちゃって」と男4人に命令した。
「君の恥ずかしい姿はバッチリ映像に残るから、どうにかされたくなかったら大人しく言う事をきくんだね」
「…汚ねぇぞッ…!!」
秋ノ宮の冷ややかな表情と言葉は死刑宣告にも近かった。そういやこんな卑怯な手口がダンディーの十八番なんだった、汚ないと言う方が可笑しい。俺の背に片膝を乗せて押さえながら乱暴に髪を掴んだ宮古はクッと喉を鳴らして笑う。引っ張られた頭皮が痛え。
「だったら、窓からドライアイス投げて野郎共を落とすって手は汚くはねェのか?」
「うッ」
「お前にもプライドがあるように俺にだってある…お前が誓ったように俺も先代の総長に約束してる。…つまらない事でファイアービートを解散させるわけにはいかねェんだ。どんな些細な事でも災いのもとは潰しておく事には越したことねぇ」
髪から手を突き放された反動で右頬がカーペットに激突した。顔に前髪が掛り視野が狭まって煩わしいが手がふさがってるので払いのけられない。髪の隙間、視界の隅に魔王の顔が映りもう一度囁いた。
「ファービーに入るか?」
「…」
YESもNOも言えないまま押し黙る。意地だ。
返事をしない俺に呆れた宮古は「頑固だな」と呟き俺の背から離れた。その代わりに俺を犯す可哀そうな役目の担った3人の男が拘束したまま仰向けに寝がえりをうたせた。こちらを見下ろす野郎A、野郎B、野郎C、そして七山。少し離れた所で俺を撮影する野郎D。
情けなさで不甲斐なくも泣きそうになる。いくら男だろうが男にヤられるなんてダメージを受けないはずねえだろ。助けを呼んでみようか。誰も来るはずねえけど。
ここへ連れて来られる前に必死で呼び止めにかかった嬉野の顔を何となく思い出す。その切ない表情とこちらを見降ろした野郎の顔が少しだけ被った。
「…は、俺みたいな男犯すなんざ…気持ち悪ィのによくやんなぁ?」
自嘲混じりに声を投げかけてみれば少し戸惑った様子の野郎Bは小さく「命令っスから…」と答えた。その哀愁に自分の立場なんて忘れて同情しちまう。そうして誰かの手が俺のシャツの裾へ伸びた時、意外な所から声が上がった。
「俺、ヤりますよ」
「「「…はッ??」」」
七山のはちみつ色の瞳が俺を映しながらもう一度充分な声量で「俺が一人で御法をヤります」と言い放った。
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