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事後処理
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目を覚ましたら保健室でした。
という漫画のような展開は日常で良くある事じゃないが、まさか自分が体験するなんて思ってもみなかった。
見上げた先には白い天井、ベッドをくるりと囲う薄い色のカーテン。ここが保健室だとぼんやりした頭でもすぐに分かった。なぜならここで何回かサボって寝たことがあるからだ。
つーか、俺は何でここにいるんだっけ。
ゆっくりと起き上がって思い出そうとする。しかしそれよりも自分の格好が先に目についた。肌寒いと思ったら俺は上半身裸。下半身は学校指定(?)の長裾ジャージを履いている。
スゲエ嫌な予感がする。
ベッドから這い出ようとした瞬間、腰が悲鳴を上げた。
「いっ!?」
重い倦怠感と腰股関節が外れてしまいそうなくらいの鈍痛。むしろ外れてんじゃねえのか。尻の窄みの辺りはまた別の痛みが思い出したように疼く。何だかヒリヒリ…。
「…うそだろ、」
この状況が嘘だと言ってくれ。思い出してはいけないことを思い出しちまった。わなわなと悶えながら枕とは反対側の方へ身を投げ出してうつ伏せに倒れる。俺の叫びを聞きつけてカーテンがシャッと音を立てて開いた。現れたのは先生では無く
「み、宮古…!?」
「起きたか」
魔王だった。俺と違って服も髪も一糸乱れていない。何でこいつもここにいるんだ…?この保健室は別棟で不良共は嫌ってここへ訪れないはず。
「…何で、ここに…」
「お前、覚えてないのか?わざわざ運んできてやったんだろ」
腕を組んでいた宮古が溜め息混じりにベッドの縁へ腰掛けてきた。ぎしっと2人分の体重でスプリングが軋む。こいつに何をされたのか断片的に思い出せるが最後がどうなったのか、いつ運び込まれたのかは覚えていない。俺は慎重に起き上がり最優先に気になっていた事を聞こうと恐る恐る睨む。
「…お前、何回ヤった」
「4回」
「っばッ!?はァァ!?少しは遠慮しろよ淫魔!!!」
「ひいひい鳴いてあんなに悦んでたじゃねえか。気持ちいってさんざん…」
「言ってねえ!!」
衝動のまま宮古のシャツの胸倉に掴みかかった。この男は動揺する所かニヤニヤと嬉しそうに笑いながら自分の手ではだけた襟元をひっつかみ白い首の付け根を見せつけて来た。そこにはくっきりと赤い歯型が残っている。
「誰のだろうな」
「!?」
まさか。
驚愕と羞恥が交互にやってくる、赤くなったり青くなったりして固まってる俺の左鎖骨を宮古の指が差す。自分からは見えない箇所。
「ここにもあるぞ。俺のが」
「てめええぶっ殺…!」
相手を揺さぶりながらふと気づく、腕に巻き付いていた忌々しいガムテープは綺麗に取れ、変わりに薄く包帯が巻かれていた。
多分この手当ても、服を着替えさせてくれたのもこいつじゃねえ。漸く保健室の主が気になって横を振り向けばカーテンの隙間から柏木が不適な笑みを浮かべ顔だけを覗かせて立っていた。
「げっ」
今のやり取りは全部聞かれてる。というか、俺が運び込まれた時点で、身体が綺麗にふき取られてる時点で。
(死にてえ…)
「…なんやの、みのりん。知らない間に宮古くんとこんな仲良ぉなって。何があったか先生に教えてえや」
眼帯に隠れていない目が弧を描いた。独特の関西弁を久しぶりに聞いた気がする。表情はにっこりと笑顔だが心の底から怒っていらっしゃる。
恨めしく宮古を睨めばつまらなそうに鼻をフンと鳴らしていきなりふてぶてしい態度になった。あれはこれはとあたふたする俺の前にスーッと幽霊のように近づいてきた柏木は腕を組み俺を越して視線を宮古に突き刺した。
「なんやけったいな事しでかしたなァ…ここに連れてきたのはまあ良しとして、あんたにしては汚い手ェ使ったやんか。それで御法を従えたつもりか?宮古くん」
「…俺じゃねえよ、秋ノ宮の案だ」
「そらそうやろう」
バチバチと火花が飛び散る中で俺は気になってた事を柏木に聞いた。
「あの…このことって先生達みんな知って…」
「安心せえ、俺しか知らん。他の先生には御法が宮古に運び込まれたとは言うたから、今緊急職員会議してる所や」
「職員会議…」
その単語に宮古が反応した。
「先公達は御法が命綱なんだな」
その一言で俺と柏木の呼吸が一瞬止まる。今日勝手に問題を起こしたことについての罪悪感をじわじわと感じる羽目になった。カーテンの隙間から漏れる窓からの光は夕焼け色で、一体どれくらい眠っていたのかを物語る。
「ちゃう、御法にこれ以上危害が加わらんようにするための会議や」
今までに無いくらい不機嫌そうな表情で柏木は俺の頭の上にぽんと掌を乗せた。先生の苛立ちとは反対に手は温かくて、俺を庇う言葉と共にじんわりとした安心感が足元から揉み解してくれるような感覚が心地よかった。
明らかに安堵した様子の俺を見て宮古は一気に表情を曇らせて立ち上がった。
それに追い打ちをかけるように柏木が出口のほうを軽く顎で指す。
「分かったんなら早よ帰り。あんたの部下が首長くして待ってんで」
チッと舌打ちをしてファービーの総長は最後に一度俺に目をやってからカーテンの向こうへ早足に去っていた。そのすぐ後に保健室の扉が乱暴に閉ざされた音を聞く。それを見送っていた柏木はほっと一息つくと、髪と同じ色をした隻眼の瞳を細めて乗せていた手でくしゃくしゃと頭を撫でる。
「もうちょっと寝ててええで、帰るときに一緒に起こしたるわ。一人にさせたらまた誰かに狙われるかもしれへんし…」
気遣ってくれる声を聴きながら俺はまだ宮古の去った方向から目を離せずにいた。
「あいつ、ずっといたのか」
「え?宮古?…せやな、御法を運んできた時からおるな」
なんだかんだで連れてきてもらった礼を言ってない。…いや、あんなことされたんだから感謝する必要ねえか。というより、あんな行為をした詫びでここへ連れてきてくれたんだろうから、意外に人徳的な行動ができるということに関心するべきか。
「俺…どれくらい寝てたの?」
柏木は俺の頭から手を放すと白衣の袖を少し引いて腕時計を見る。
「二時間ぐらいちゃう?」
体力には自信あったけど、こんなに寝込むなんて。…殺されるんじゃねえかと思うほど激しいセックスだった。
時間が経つにつれ記憶が鮮明に蘇りそうになり慌てて頭を振ると布団をかぶり直した。
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