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金鳳花 5
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穴の空いた天井から差し込む月明かりは
広間の隅に濃い影を作っていた
ゴファッ ゴポッ
奇妙な音と共に
甘い香りがその濃さを増し
熟れた匂いは
半ば腐りかけた果実の甘さに似ていた
キシッ
白い男が広間に広がる月光を横切る
月の光に照された男は
その白さの為
更に眩しく輝いて見えた
隅の闇に近づくにつれ
微かに荒い息づかいが聞こえる
白い男は表情ひとつ変えることなく
そちらへと進んでいく
すると…
ヌルリとその足にナニかがまとわりついた
ドロドロとした液体が辺りに拡がっている
甘い香りはこの液体から放たれている様だった
キラキラと表面が黄金色に波立ったかと思うと
一瞬で輝きは失せ
液体は黒とも赤ともつかず
常に変化を見せている
男の白い着物に液体が染みる
その溜まりの中に禍モノがいた
人と比べると一回りは大きいであろう体躯
鶯色のその肌
力なく壁に凭れる様に
その手足は投げ出されている
額には赤黒い角が生えており
禍々しい様
今はその肉が所々斬り裂かれており
中からあの不思議な液体が流れ出ている
ガラガラと喉が鳴り
鶯色の腹は微かに上下する
ガハッ
沸き上がる嗚咽に鶯の禍モノは
その口から黄金色の塊を液を垂らして吐いた
うっすらと開いた左目は
焦点が定まっておらず
右目は深い傷を負い
恐らくその眼球は此処には無い様だった
血まみれである
その様子を白の男が見下ろす
「………鬼か」
囁く様な低い声だった
白い男が鶯の鬼の前に身を乗り出して膝をつく
キーンと鋼の鳴る音が
白い男の左袖の中から突き刺さるように響いた
無表情であった白い男が苦しげに顔を歪めた
自らの右手で自身の左腕付け根を着物の上からきつく握った
鋼の音が増して響く
歯を喰い縛りその息がすこし乱れた
「くっ」
何かに耐えるように唇を噛む
白い男のうっすらと色づいた唇に血が滲んだ
「……ぅぅっ…………」
鶯の鬼が犬の唸りの様な声を上げると
鋼の鳴りがおさまった
自らの腕をキリキリと握り締めていた手を外し
白い男は右手を床についてその呼吸を整える
べっとりと
流れ広がった鬼の血が手に馴染む
赤黒く着物を汚した白い男が
再びゆっくりと立ち上がった
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