アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
雨。拓海side
-
「ごめん、俺さ、しつこい子嫌い」
鈴木くん帰ったからカラオケ行こう、なんてまだ言う女の子に向けていた笑顔を、消す。
戸惑う杏が緩ませた腕から抜けて、鞄を持ち直す。
「た、くみ…?」
「じゃあね」
背中を向けて、歩き出す。
教室を出て、階段を駆け下りて、靴を履くと、空は鉛色に染まっていた。
降り出した雨に構わず走る。
門を飛び出すと、冷たい冬の雨が髪を濡らしていく。
勢いが増し、制服も鞄も、冷たくなっていった。
怒っているような、俊哉の表情。
あのとき、杏を振り払えばよかった。
悲しそうに、向けられた背中。
あのとき、追いかければよかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
97 / 125