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晴れ渡った空の下、今年もベランダに折りたたみのウッドチェアを持ち出して缶ビールを開ける。
俺の隣には、同じようにビールを片手に持った相方。
相方って言い方は、なんだか妙にその関係をうやむやにして勿体付けてるような気がしてあんまり好きじゃないけど。
俺達の関係にこれ以上ぴったりくる言葉を見つけることが出来ずに、もう何年も経つ。
「はい、かんぱーい。」
そう掛けられた言葉につられて、500mlの缶を空中で合わせて。
昼間から摂取するアルコールの美味さに思わず笑みが零れてしまう。
「最近は?やっぱ忙しくしてんの?」
缶の中身を半分飲み切った所でそう問いかける。
「あーまあ、ぼちぼち。お前は?」
「俺も。」
「そっか。」
短い会話の後にまた訪れた沈黙。
それは全く気まずいものではなくて。
俺は適当にスマホのゲームをしているし、相方は膝に乗せた猫と戯れている。
俺達の関係を説明するのは難しい。
難しいけど、今日は暇を持て余しているから説明してみようと思う。
まず俺達が出会ったのは高校生になった年。
同じ部活で汗を流して親友になった。
大学へ進む頃にはお互いの趣向というか……、まあ平たく言うと男を恋愛対象にしているという事にどちらともなく気が付いて。
需要と供給がタイミングよく合致したから、そういう関係になった。
ちゃんとしたお付き合いをしようっていう事になったのは社会人3年目の頃。
自分たちを取り巻く人達が結婚したり子供を持ったりしていって、きっとどこか焦ってしまったんだと思う。
今までスルーしてきた恋人達のイベントをこなして、同棲を始めて。
子供はさすがに無理だから猫を飼った。
あの頃が2人で過ごした時間の中では一番の暗黒期だったなぁ。
それまでの気ままな関係とは違って、お互いに愛情を押し付け合って求め合って。
結局、そんな関係は長くは続かなくて。
2年で同棲を解消した後、俺達はまた元の俺達に戻った。
過ぎ去った日々に想いを馳せると、なにもかもが懐かしくてバカバカしくて。
10代、20代の頃の自分の幼稚さに呆れるけど。
それでも一生懸命だったな、とは思う。
一生懸命2人の距離を縮めて傷ついて離れて、また歩み寄って。
やっと、こんな風に穏やかに過ごせるようになった。
それはとても、かけがえのないもの。
「なにぼーっとしてんの?」
そう言いながら立ち上がった相方が、手の中でぬるくなったビールを新しいものと代えてくれる。
取り上げられたそれをどうするのかと思えば、立ち上がったついでって感じで飲み干されて。
こういう所を好きだなと思う。
今は俺の家で飼ってる猫は、久しぶりに会えた元ご主人様に抱かれて思う存分甘えている。
その背中を撫でる手は相変らず日焼けをしていて。
平和なその光景をのんびりとした気分で眺める。
これからの未来に何が待っているのかは分からない。
分からないけど。
まあ、それも良いんじゃないかな?
どんな事があっても、きっとまた歩み寄って俺達は俺達でいられるって。
そう思うから。
<end>
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