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駆け引き
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「…っ…俺も……」
思わず、真山の背中に腕を回した。
好きすぎて苦しい。
真山が、小さく笑いながら、そっと抱きしめてくれる。
「…なに笑ってんの」
「ううん。やっぱり体は素直だなって」
「っ…!」
「顔真っ赤だし」
「うるさい…」
「耳も真っ赤だし」
「……ばーか」
めっちゃ恥ずかしい、やばい。
唇が耳を食む。
ぴくっと体が震えてしまって、さらに顔が熱くなる。
「…っ…もう帰る…」
「ふふ、ごめんね意地悪して」
泣きそうになってる俺のまぶたにキスをして、そっと手を繋いでくれる真山。
ちょっとだけ握り返して、ようやく二人で家を出た。
「え…待って、真山」
「ん?」
「外で手繋ぐのはちょっと…」
「嫌なの?」
「…恥ずかしいから…」
嫌なわけない。
けど、やっぱり男同士だし、人目につくところでこういうことするのは……
「…そうやって可愛いことばっかり言うから、いじめたくなるんだよ?」
「え?」
「照れてる藤川が可愛いから、離してあげない」
「なっ…!」
(こいつ…!)
いたずらっぽく笑う真山。
正真正銘のドSだ。
「藤川も、俺の前で恥ずかしいなんて言わなければいいのにね」
「…………」
くっそ。
なんだよこれ。
さっき、素直じゃないって言われたから、次は意地張らないようにしようと思って、恥ずかしいって正直に言ったのに…
素直になったらなったでこれだよ。
(なんなんだよ…)
本当にずるいと思う。
何とかして対等な立場になりたい。
それが無理ならせめて、一度でいいから言いくるめてみたい。
例えば……
「…全然恥ずかしくねぇし」
真山は、照れてる俺が可愛いからいじめたくなるって言ってた。
つまり、俺が照れてないってわかれば、つまんなくなって手を離してくれるはず。
完璧だわ。
「恥ずかしくないの?」
「全っ然。これっぽっちも恥ずかしくない」
「じゃあ、ずっと手繋いでていいよね?」
「…………」
あぁ…こうなるのか、なるほど。
なんかもう……
(…だめだ。これは勝てない)
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