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可愛すぎると
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楓は、無理に話してくれなくていいって言ってくれた。
というわけで、お言葉に甘えて何も言わないことにしようと思う。
雅との件は、思い出すだけでもちょっとメンタルやられるし、これ以上は楓に心配かけたくないし。
(なんて、ただの言い訳だよな…)
本当は、全部言ったほうがいいんだろう。
こんなに心配させちゃったんだから。
でも…やっぱり無理だ。
一日で二人の男に告られて、そのうちの一人と付き合ってるなんて、口が裂けても言えない。
改めて考えると、我ながらエグいことしてんな…。
(…親には話せないことも、楓にはずっと話してきたのにな)
男同士で付き合うって、きっとそういうことなんだろう。
誰にも言えない思い出が増えてく。
それなりの覚悟しなきゃなぁ、と、ぼんやり考える。
「…兄ちゃん」
「ん?」
「あの……」
むぎゅむぎゅ抱きついてくる楓。
何か言おうとしてるんだろうけど、言いにくそうだ。
優しく頭を撫でながら待った。
「…きらいって言ったの、怒ってる…?」
ようやく、ちゃんと俺を見てくれた。
と思ったら、さっき止まったと思ってた涙が、また溢れそうになっていた。
可愛すぎてブッ倒れそう。
「怒ってないよ」
抱きしめて、ぽんぽんと頭を撫でる。
不安で泣くくらいなら、最初から意地張らなければいいのに。
本当に俺の弟は可愛いな、と思いながら、俺も楓に負けないくらいむぎゅむぎゅする。
それにしても薄い体だな…。
「ほんとに?ほんとに怒ってない…?」
「怒ってないよ。だから泣くな」
「…ん……」
俺の胸に顔をうずめる楓。
髪がいい匂いで、すげー癒される。
変態っぽいとか今さら。
可愛いもんは可愛い。
「…きらいなんて嘘だからね」
ぽそっと呟く声を、俺は聞き逃さなかった。
さっき、真山に言われたセリフを思い出す。
『…そうやって可愛いことばっかり言うから、いじめたくなるんだよ?』
(…なるほど、こういうことか…)
確かに、可愛すぎるといじめたくなる。
こうやって。
「…じゃあ好き?」
「え?」
「俺のこと好き?」
言いながら、なんか俺、真山みたいだな…と思った。
けど、困ってる楓を見ると、かわいそうになって心が痛む今のうちは、まだ大丈夫だと思う。
本物のドS(真山)は、その困ってる姿すらも楽しんでるんだきっと。
(俺は、まだ良心が残ってるから大丈夫。真山ほどドSじゃないから大丈夫)
そう自分に言い聞かせて、楓の返事を待つ。
兄ちゃんはドSじゃないから、優しいから。
安心して好きって言っていいよ、楓。
「は…恥ずかしいから言いたくない…」
「好きじゃないの?」
「っ…!」
俺は真山か、と心の中でツッコむ。
こんな兄ちゃんでごめん、楓。
なんでこんなことしてるんだろう、と本気で後悔し始める。
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