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兄弟そろって
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「あ、そうだ楓」
「ん?」
すっかり忘れてたけど、楓にお土産あるんだった。
ちゃんとプレゼント用にラッピングしてもらったマフラーを渡す。
「昨日、買い物行ってさ。楓に似合いそうなのあったから買ってきた」
「……ずるいね、兄ちゃんって」
「え?」
「物でオレを釣ろうとしてるんでしょ!?知ってるんだから!」
「えぇぇぇ待って待って待って!」
何それ。
いくら反抗期だからって、兄ちゃんに向かってそんな言い方ある…?
「…あれ…?兄ちゃん…?」
やばい、泣きそう。
楓の前で泣きたくないとは思ってたけど、まさか楓に泣かされるとは思ってなかった。
目の前が滲んでく。
「え…ま、待って兄ちゃんごめん!話聞いて?」
「…なんだよ…」
結構がんばって選んだのにな。
楓の喜ぶ姿しか想像してなかった俺は、さっきから胸の痛みが治まらない。
涙目の俺に、楓はすっかり困ってしまっていた。
「…あの、あのね、兄ちゃん昨日の帰り遅くなったからね、プレゼントでオレの機嫌を取ろうとしたのかなって…」
あぁ…昨日の約束守れなかった分、プレゼントで楓の機嫌を取ろうとしたと。
俺、そんな姑息なヤツだと思われてたのか…。
「ごめん、兄ちゃん…ていうか、そもそもいつもの冗談のつもりで…そんな、傷付けるつもりは……」
しゅんとして呟く楓。
さっき俺がしてたみたいに、今度は楓が、俺をぎゅっと抱きしめてくれる。
「その…誕生日とかでもないし、何か理由があるのかなって…」
やっぱり、兄ちゃんから突然プレゼント渡すなんて変なのかな。
ブラコンの俺が悪いのかな。
「……これ買ったときは、ちゃんと帰るつもりだったよ」
「え?」
「…帰りにいろいろあって、帰れなくなっちゃったけど…俺だって本当は、一秒でも早く帰りたかったよ。楓とゲームしたかったよ…」
あぁ、いま俺すげー惨めだ。
ぎゅっと楓にしがみつく。
女々しいし、バカみたいだな…。
「っ…ごめん、兄ちゃん…」
俺がそこまで言うと、さっき泣き止んだばかりの楓も、つられて泣き出してしまって。
少しの間、二人で抱き合って泣いた。
カオスだった。
「…ほんとにごめんね、兄ちゃん…」
「ううん。俺こそごめん…」
背中を撫でて慰めてくれる楓。
こんな風にしてもらえるなら、たまには楓の前で泣くのも悪くないかもしれない、とか思いながら、俺も楓の背中を撫でた。
それにしても、兄弟そろって泣き虫ってどういうことだよ。
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